【3.5L V8を積んだビュレット】トライアンフTR8 ブランドの最終章へ再試乗 後編
公開 : 2021.07.10 17:45 更新 : 2022.08.08 07:29
ブランドに大きな打撃を与えたTR7
英国スピーク工場の閉鎖と、労働者との闘争でトライアンフは1年間を失った。その間、注文は保留されたままだった。1980年にロード&トラック誌が新しいTR8を鮮烈に紹介したものの、その2年後にはモデルの終了が報じられた。
トライアンフTR8が消えると聞いて、慌てた人もいたようだ。余分に資金を用意しても、購入する機会は得られなかった。
トライアンフというブランドは、TR7の不評で大きな打撃を受けていた。品質管理がずさんで信頼性は低く、1979年に登場したTR7コンバーチブルも、すぐに姿を消した。
当時のある調査によれば、43%のオーナーが交換部品待ちでクルマを寝かしていると答えたらしい。別のクルマを買おうと考えている人は、42%にも達した。「クルマは好きですが、信頼性のないクルマは好きではない」。とコメントした人もいたという。
10本それぞれの足を1つに束ねていた、巨大なブリティッシュ・レイランド。何曜日に何を決めるかすら合意できず、独自にそれぞれが動き、全体を損ねた。規模での有利性と合理化を求めたが、希望に終わった。
当時のトライアンフを取り巻く環境を考えると、TR8を量産にこぎ着けられたことは注目に値する。クルマ自体にも問題があったことは確かだが、最も悪い影響を与えたのは、ブランドの足を引っ張る外部的な要因だったといえる。
最終章を飾ったたくましいスポーツカー
1979年に保守政党が英国の政権を握ると、1980年代半ばまでに1ポンド1.8ドルから2.4ドルへ上昇。アメリカ市場での利益は縮み、MGは1979年に販売されたクルマの利益を、1台あたり900ポンドも失ったという。
もっともトライアンフが一足先に行動へ移し、数年前にTR8とコンバーチブルを投入していても、為替レートの影響は避けられなかっただろう。
トライアンフTR8ほど、ドライバーを弱点で悩ませるスポーツカーは多くない。しかし時間が過ぎ、当時の記憶が遠くなるほど、パワフルなV8エンジンを搭載したモデルを評価したい気持ちが高まってくる。
トライアンフの最終章を飾った、たくましいオープンスポーツ。TR8はすごく酷くて、すごく良いクルマだ。
トライアンフTR8(1978〜1981年/欧州仕様)のスペック
価格:1万2995万ポンド(新車時)/2万ポンド(308万円/現在)以下
生産台数:2715台
全長:4200mm
全幅:1684mm
全高:1267mm
最高速度:222km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:6.0-9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1203kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:139ps/5000rpm-150ps/5000rpm
最大トルク:23.1kg-m/3200rpm-24.8kg-m/3200rpm
ギアボックス:5速マニュアル