【詳細データテスト】トヨタ・ミライ ゆったりした快適な走り 後席と荷室は広くない とにかく安い
公開 : 2021.06.26 20:25
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
初代ミライは、2010年に登場した3代目プリウスとの関連が強いモデルで、累計1万台ほどを販売した。その何倍もの成功を狙っているのが、今回の2代目ミライだ。先代と同じなのは燃料と動力くらいで、それ以外は明らかに異なるクルマである。
初代ミライのオーナーは、メーカーにもっと長い航続距離だけでなく、より高い快適性と実用性もほしいと訴えてきた。トヨタのほうは、はるかに高い高級感やマテリアルのクオリティ、スタイリングの好ましさで、新型の顧客を惹きつけたいと考えた。
つまり、真に高級なプロダクトらしい熟成された魅力と、サステイナビリティ以外の動機でもほしくなるクルマが求められたのである。それこそ、メカニズムのアーキテクチャーを、プリウスではなく、後輪駆動のレクサスとシェアした理由にほかならない。
多種の金属の混成によるシャシーのプラットフォームは、燃料電池パワートレインに合わせた構成と補強がなされた。ダイキャストのサスペンションタワーや専用のサイドシル、バルクヘッドの環状補強によって、剛性向上が図られている。サスペンションは、四輪独立の前後マルチリンクで、スティールのコイルスプリングを装着する。
また、ボディサイズもフルサイズの高級車といえるようなものになった。先代より85mm長く、70mm広いうえに、ホイールベースも140mm延長されていて、占有面積はBMW5シリーズを優に超える。キャビンは、フル5シーターといっていい。ただし、トランクルームは期待したより小さい。
メカニズムのレイアウトは、大幅に変わった。水素燃料電池はパワーが12%アップし、搭載位置は前席下からボンネットの下へと移っている。圧縮された大気と反応させて発電するための水素を収めるタンクは3つで、センタートンネルと後席下の2本はホイールベース内でT字型に配置され、もう1本はトランクルームの床下に設置された。最大容量は5.6kgと、先代の5kgを上回る。
WLTPモードの水素消費率は112.7km/kgで、航続距離は最大644km。106.2km/kgで、533kmほどで息切れした先代からは明らかな進歩を遂げている。しかも、ボディサイズは拡大し、車両重量も75kg増えているうえに、投影面積の広がった前面の空力も後退していながらの数字なのだから、たいしたものだ。
リアアクスル直上に搭載される駆動用モーターも新設計で、シングルスピードのトランスミッションが組み合わされる。電力は基本的に燃料電池から送られるが、モーターと後輪の上に配置された1.24kWhのリチウムイオンバッテリーが回生エネルギーを蓄え、燃料電池の電力供給で間に合わない際のサポートを行う。