【詳細データテスト】トヨタ・ミライ ゆったりした快適な走り 後席と荷室は広くない とにかく安い
公開 : 2021.06.26 20:25
内装 ★★★★★★☆☆☆☆
先代のインテリアはプリウス由来の、開放的だがスポーティさのないものだったが、新型はいかにもGTカーらしいスタイルになった。レクサスLSと共通のプラットフォームを採用したことを考えれば、それは驚くような結果ではない。
スカットルは高く、着座位置は低い。さらに、ワイドなデジタルディスプレイやセンタートンネルの高さが、ドライバーズシートをより低く感じさせる。センタートンネルの下には、10000psiの圧縮水素タンクが収まっている。
さらに、センターコンソールは左右非対称で、GRスープラのそれを思わせる。ドライバーをしっかりと取り囲み、包んでくれるような感覚をもたらす形状だ。
シートはソフテックスという、軽量で耐久性の高い合成皮革の表皮が張られ、ヒーターとベンチレーションを装備。柔らかさとサポート性のバランスはすばらしい。革巻きステアリングホイールの位置調整幅は広く、胸の近くまで引き寄せられる。
つまり運転環境は、ロングノーズのV8ツアラーだといわれても驚かないようなもの。しかも、ダッシュボードやドアトリムにまで張られたしなやかなマテリアルが、ラグジュアリーではないまでもプレミアム感のあるクオリティを強調してくれる。
センターコンソールやディスプレイ周辺のピアノブラックパネルと、スイッチ類を別にすれば、硬いプラスティックのパーツを見つけるのは難しい。コスト的にはパワートレインがかなりの比率を占めているはずだが、内装も6万ポンド(約840万円)級のクルマに相応しい仕上げが施されている。
レクサスまでは行かないまでも、トヨタとしてはハイエンド、というのがあるテスターが漏らした感想だが、けっして悪い意味合いではない。
しかし、後席と荷室はそれほどみごとな出来栄えではない。少なくとも先代からの改善はみられ、リアシートは2座ではなく3座になった。とはいえ、大柄なボディサイズのわりに、レッグルームはBMW5シリーズよりだいぶ狭い。
さらに、シート下にパワートレイン関連機器と水素タンクが配置されているので、背の高い乗員はパノラミックルーフの張り出しに髪が触れてしまう。テスラ・モデルSや、このクラスのエンジン車なら、その点はずっとよくできている。
リアアクスル上には駆動用バッテリーと電気モーターが置かれており、第3の水素タンクは荷室下に設置される。そのため、トランクルームの容量が食われてしまい、奥行きも深さが足りず、後席の可倒機構も備わらない。
こうしたキャビンのしつらえを考えると、ミライは快適なサルーンとは呼べない。驚異的に広々としたクーペか、かなり妥協した大型セダン、といったところだ。