【詳細データテスト】トヨタ・ミライ ゆったりした快適な走り 後席と荷室は広くない とにかく安い
公開 : 2021.06.26 20:25
走り ★★★★★★★☆☆☆
ミライのパフォーマンス的なポテンシャルに失望しないためには、キャビンがリア寄りの驚くほどスポーティなシルエットに抱く幻想を、走り出す前に捨てる必要がある。
20年前なら、この手のルックスのクルマにはマッチョなV8が積まれ、1937kgというテスト車の重量に見合ったパワーを発揮したはずだ。そう考えると、リアに積まれたミライのモーターは期待に沿わず、馬力荷重比は95ps/tにすぎない。この数字は、いまでは中級グレードのハッチバックでも達成できるレベルだ。
それゆえ加速は、堂々たるものだが活発とはいえない。1.6kmストレートで計測したタイムは、0-97km/hが8.7秒、0-161km/hは25.5秒というもの。これに近いところでは、2019年にテストしたフォード・フォーカスSTラインXが、182psで8.9秒/22.8秒をマークしている。
6万ポンド(約840万円)のミライと、2万6000ポンド(約364万円)弱のフォーカスが加速性能で肩を並べるというのはどうにも腑に落ちない。しかし、唯一ともいえる競合車であるヒュンダイ・ネッソには勝っている。あちらはさらに高額なFCEVで、タイムは9.6秒/38.5秒だった。いずれにせよ、バッテリーEVが見せる、胃袋を締めつけるようなスピードは、燃料電池車ではそう楽に出せないようだ。
とはいえ、ミライが見せる控えめなパフォーマンスの性質はほとんど違和感を覚えないものだ。30.6kg-mというまずまずのトルクにより、市街地での0−50km/h程度ならば爽快で活発なスタートダッシュを楽しめる。
スロットルペダルの調整も巧みで、レスポンスには優れるが、直感的に減衰する。ここに驚きはない。メルセデスでいえばEクラス以上Sクラス未満といったサイズのサルーンを操縦するには、これは重要な点だからだ。
50km/h以上の領域では、このパワートレインの出力特性がほぼ完璧にリニアな加速をもたらすことがわかる。それは、電動車一般に共通してみられるものだ。
われわれが気になったのは、ブレーキペダルのほうだ。動きがソフトではっきりせず、よほどゆっくり減速するのでなければ、重量級の大型サルーンの通例を上回るくらい踏み込まなければならない。
113−0km/hの45.9mという制動距離は妥当なので、絶対的な性能は不足していないように思うだろう。しかし、もう少し食いつきがよければ使いやすいだろうし、ずんぐりしたセレクターレバーをBrモードに入れたときには回生ブレーキをもっと強く効かせてほしいところだ。