【詳細データテスト】トヨタ・ミライ ゆったりした快適な走り 後席と荷室は広くない とにかく安い
公開 : 2021.06.26 20:25
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
極めて先進的な電動パワートレインと、デジタルディスプレー満載のコクピットを備えるが、ハンドリングに関しては旧態依然としている。
もっとも、それを非難しようというつもりはない。単にサスペンションのトラベルが大きく、ボディのロールのコントロールがゆったりとしていて、21世紀に入る直前の欧州の大型サルーンを彷彿させるような上下動をみせる。
思い出すのはE39世代の5シリーズだ。ミライのハンドリングはかすかながら心地よいオーバーステア寄りのバランスだ。とはいえ、どのBMWよりもアンダーステア傾向ではあるが。また、ステアリングは飛び抜けてわかりやすい。ただし精確で、電動アシストのラックは油圧並みのクオリティと、ひたすら一定の手応えをもたらす。
それだけではなく、気楽でいて正確な、流れるような走りも可能になる。最新のサルーンではそれを、ボディコントロールの改善を図るため犠牲にしてしまっているケースがじつに多い。
その点、このミライなら、いったんそのボディサイズに慣れてしまえば、ボートのような日本製サルーンに思い浮かべるようなほかにはない優雅さと、得られる限りの安楽さを享受できる。このクルマにはぴったりのキャラクターだと、われわれは感じた。
もちろん、その反面で、どう走らせてもドライビングを楽しめるようなクルマだとはいいがたい。たしかに、コーナリング中はスロットルで適度なバランスを保てて、広い道ではゆったりと流せるのは、とても穏やかな満足感を味わわせてくれるのだが、決して後輪駆動レイアウトらしさを発揮してくれることはない。
そのパーソナリティは、後輪駆動車としてはソフトすぎる。攻めた走りをするとグリップにほどよく余裕があることはわかるが、スロットルペダルをどう踏んでみても、鼻先の進入角は断固として穏やかなままだ。
結論として、プリウス派生のシャシーを用いて2014年に登場した初代からすれば、間違いなく改善されている。それでも、内燃機関を積んだハンドリング自慢のサルーンと比較できるものにはなっていない。