【いま1番の中古車】BMW E39型M5 英国編集部が選出 AUTOCARアワード2021 前編
公開 : 2021.06.24 13:45 更新 : 2022.08.08 07:30
クルマ好きにとって、狙い目のモデルが豊富に残る現在の中古車市場。その中でベストに選ばれた1台を、英国編集部が再試乗しました
当時のBMWで最も優れたドライバーズカー
20年落ちのE39型M5。もはや特に速いわけでもないし、見た目も抜群とはいえない。気難しい性格で、唯一、高音域のエグゾーストノートに好感が持てるくらい。
それに英国東部、クイジェリーとティザーリントンの間に続く道は、ウェールズ地方の山が幾つかあるものの面白みに欠ける。欧州で最も退屈な高速道路かもしれない。渋々引き受けたかのように、そんな理屈を並べて試乗に向かった。
気を悪くしたら失礼。本当は違う。1990年代末から2000年代初めに製造されたE39型のM5は、BMWが当時までに生み出したモデルの中で、最も優れたドライバーズカーとして高い評価を集めていた。
AUTOCARの英国編集部が、これぞという中古車を1年間考えて候補を並べ、勝ち残った選ばれし1台だ。もちろん筆者も、E39型M5へ投票している。
E39型のBMWは、英国では特に珍しくはない。だが、英国BMWのヘリテージ・フリートが保有する、真新しいデモカー以上に美しい例はないだろう。
20年以上も前に生まれた、アウトバーン・マシン。当然のように筆者はチェダー渓谷を目指した。自分へのご褒美として、冒頭の理屈を編集部員に残して。そして、すっかり夢中になってしまった。
E39型のBMWには、購入を思い留まらせるだけの良くない評判がある。一方で、これまでで最高のMモデルだと評価する人もいる。どちらが本当なのだろう。
まだ10代だった筆者が雑誌で見て憧れて以来、ずっと欲しかった1台だ。本当のことを知りたいと、長い間思ってきた。
アナログな魅力を備える高速サルーン
遂に運転する機会を掴んだM5の見た目は、予想通り。いってしまえば、普通のE39型と大きく違わない。
ドイツ製の超高性能サルーンとして、雛形が形成されはじめた頃のモデル。抜きん出た高性能ぶりで多くの尊敬を集めたにも関わらず、容姿は驚くほどに謙虚に見える。むしろ、筆者としては好感が持てる。
実際に走らせると、E39型M5は素晴らしい。シンプルで能力に優れ、機械的な水準も高い。アナログな魅力を備えているという点で、現代のM5とは一線を画している。このことを確かめられて、とてもうれしい。
現代でも充分以上と感じさせる勢いで加速し、追い越しも一瞬でこなせる。英国へ上陸してから23年が経つ。これより高速なファミリーサルーンは、今でも必要性を感じられないほど。
1998年3月、ジュネーブモーターショーで1台のBMWが発表された。当時、世界をリードする高性能サルーンといえば、ロータス・カールトンが代表例だった。
腕利きのチューニング・ガレージが生み出したスペシャル・モデルを除いて、382psを超えるモデルは存在しなかった。BMWの高性能サルーンにも、それまでは直列6気筒が搭載されていた。
しかしミュンヘンのMディビジョンは、E39でルールブックを破棄する。自然吸気の4.9L V8エンジンをフロントに押し込んだ。アウディやメルセデス・ベンツが350psを超えるサルーンを用意していない時代に、400psを与えた。