【BL一筋に50台以上】メトロ・バンデンプラにローバーSD1 エンスージァストの血筋 後編
公開 : 2021.07.11 17:45
足代わりはアレグロ・バンデンプラ1500
ブルーのオースチン1300 バンデンプラは、カーズリーのエンスージァスト心に火を付けた1台かもしれない。1980年代、まだ若かった彼は、実家の近くで放置されているこのクルマを発見し、レストアを仕上げた。
「地元で開かれた自動車ショーに展示すると、ディーラーが3000ポンドで買ってくれました。ほかにも放り出しモノがあれば喜んで買うよ、と話してくれたのを覚えています。後に、彼がそのクルマを1万ポンドで日本向けに売っているのを知り、驚きましたね」
カーズリーは現在、3台のオースチン・アレグロがベースのバンデンプラ・プリンセス1500を足代わりに乗っている。1974年式の、発表直後のクルマも含めて。
中でも、アップルジャック・カラーのボディにシャモア・レザーの内装を組み合わせた1台は、特別な存在だという。数年前に、英国ストンドン自動車博物館の払い下げセールで購入した。
ペールゴールドのバンデンプラ・プリンセス1500は、レイランド・スペシャル・チューニング社の従業員から購入したクルマ。ツインSUキャブが載る、Eシリーズ・エンジンが積まれている。
窓を覗くと、肉厚なレザーシートと光沢のあるウッドパネルが目に入る。多くのコレクションの中で、カーズリーが1番頻繁に距離を重ねているそうだ。実際に筆者も運転させてもらった。
トルクが太く、3速や4速でも充分な加速を引き出せる。老眼鏡をかけたオーナーが、のんびりと発進させるアレグロのイメージを裏切る勢いで、交差点からダッシュできる。
今に生き延びるBLブランドの輝き
当時の自動車メディアは、シフトフィールの悪さを槍玉に挙げた。だが、このクルマの5速MTは滑らかに動く。ステアリングはアルファ・スッドほどではないにしろ、乗り心地は良くブレーキも充分以上だ。
「以前にドーチェスターの街をこのクルマ(プリンセス1500)で訪ねて、裕福な人々に合う機会がありました。彼らは、素晴らしいと気に入ってくれました。新しいモデルなのか、どこで買えるのか、と聞かれるほど」
最近の彼は、積極的に台数を増やそうとはしていない。どうしても欲しい1台がない限り、コレクションを手放すつもりもない。最近やってきた、4万6000kmを超えたばかりのウーズレー・シックスも良好な状態に見える。
「売り手の説明通りの状態ではありませんでした。全面的な手当てが必要そうです」
ウェッジシェイプのウーズレー・プリンセスも、カーズリーのコレクションでは少し変わったラインナップに入るだろう。モデル末期の2.0Lエンジンを載せ、HLSグレードの真っ白なボディをまとう。
黄緑色のハッチバックの方は不動車と聞いて、筆者は結構残念だった。今まで一度も運転したことはないから、今後も運転できないだろう。
とはいえ、アンソニー・カーズリーのような生粋のエンスージァストがいるからこそ、今でもブリティッシュ・レイランドの輝きを楽しむことができる。うれしい1日だった。彼のガレージにある限り、伝説のクルマたちも平穏に生き延びれるはずだ。