【新世代グランドツアラー】フェラーリ・ローマ比較試乗 アストン マーティンDB11xベントレー・コンチネンタルGT 前編
公開 : 2021.07.10 09:45 更新 : 2021.08.05 08:06
ライバルを寄せ付けないドライビング体験
見た目は美しくエレガント。力強く興奮を誘う。コンパクトで使い勝手も良い。AUTOCARを定期的にご覧いただいている方なら、すでに試乗レポートはお読みいただけたと思う。
とりわけフェラーリ・ローマで感心させられるのが、シリンダー数や最高出力で勝るアストン マーティンDB11 AMRや、圧倒的にラグジュアリーなツーリング能力を備えるベントレー・コンチネンタルGTと並ぶ存在だということ。
フェラーリは、この2台と渡り合える独自性を生み出した。ニッチ市場といえるスポーツ・グランドツアラーという場所に、新たな領域を開拓したとさえ思う。
フェラーリの動的能力を引き出せば、周囲の距離感を歪めさせ、質量を包み隠すという魔法にドライバーは魅了される。得られるエネルギーやシャープさ、サウンドが一体となるドライビング体験は、ライバルを寄せ付けない。
普段使いもできる実用性に、クラシカルなフロントエンジンというレイアウトが生む優雅さも兼ね備えている。ブランド内のミドシップ・スポーツとも一線を画している。
ローマはまさに、ラテン系のエネルギッシュさが強調された、毎日乗れるスポーツ・グランドツアラーだ。何よりプロポーションが、それを雄弁している。
ボディサイズは、ベントレーやアストン マーティンより小柄。しかも軽量で、DB11より300kgも車重が少ない。ほとんど4気筒のジャガーFタイプに釣り合うほど。
どの角度から見ても惹き込まれるボディ
車内に座ってみても、その通りに感じられる。全高はDB11の方が若干低いものの、ローマのボンネットラインは両車より低い。フロント周りのレイアウトは、かなりタイトに違いない。エンジンの搭載位置も、相当に低める必要がある。
DB11やコンチネンタルGTを郊外の狭い道で運転すると、大きなテーブルを廊下で運ぶように、常に左右の距離を気にしてしまう。ローマなら、遥かに道をたどりやすい。
長距離の安楽性や、味わいの豊かさではライバルに及ばないかもしれないが、ローマも十二分に特別。運転席からの眺めも素晴らしい。ボンネットの谷の両脇に見える彫刻的なフロントフェンダーの峰は、豊かな川を挟むアペニン山脈のよう。魅惑的だ。
ボディのデザインは、どの角度から見ても惹き込まれる。筋肉質でふくよかなアストン マーティンより遥かにシンプルでスリム。ハンサムで堂々としたベントレーより、タイトでデリケート。
試乗車のボディカラーは、ブルーローマと呼ばれる目立たないダークメタリックだったが、静止状態での魅力は2台を凌駕していると感じる。少し女性的で、ネコ科の動物風でもある。意見が分かれるとしても、筆者は好きだ。
車内空間は、この3台では1番狭いと予想するだろう。確かにベントレーにはない、距離の近さがローマのインテリアにはある。それでも、練られたパッケージングのおかげで居心地は良い。
この続きは後編にて。