【新世代グランドツアラー】フェラーリ・ローマ比較試乗 アストン マーティンDB11xベントレー・コンチネンタルGT 後編
公開 : 2021.07.11 09:45 更新 : 2022.08.08 07:29
桁違いといえる最新フェラーリの能力
中回転域での過剰なパワーは、リアタイヤのグリップを軽く超える。シャシーバランスは懐が深く、ドライバーのいたずら心も受け入れてくれる。さらに、アストン マーティンはコミュニケーションが取りやすい。
リアアクスルの少しゴムっぽい感触と、トラクションの抜け方には不確実性があり、限界へ迫るには注意も必要。筆者は、より精度感の高い操縦特性の方が好みではある。
しかし速度域を問わず、DB11の車内は終始快適。固有の手応えのある操作系と、オールドスクールな構成という魅力を味わえる。フェラーリ・ローマ以上に、穏やかに運転している時の印象はリッチで魅惑的。
ところが、ローマのグランドツアラーとしての能力は桁違い。本当のサラブレッド級スポーツカーへ期待するであろう、スピードやハンドリングと同じくらいに。
ライトウエイト・スポーツでしか生み出せないような、一級にタイトな身のこなしと垂直方向の姿勢制御も備えている。回頭時の鋭敏さにも言葉を失う。初めは、少しやりすぎに思えるかもしれない。
ベントレーから優雅な気持ちでローマに乗り換えれば、ステアリングのクイックさやレスポンスに面食らうだろう。少しの時間をかけて、繊細さと鋭さに慣れる必要がある。自身に丁度いいドライブモードも見つけておきたい。
そうすれば、軽量なサーキットマシンに匹敵するグリップ力と旋回能力、安定性、シャープなバランスを両立させた、スポーツ・グランドツアラーに驚嘆できる。
ドライビング体験と共存する実用性と快適性
どんなフロントエンジンのスポーツカーでも得られない、興奮と一体感でローマはドライバーを陶酔させる。比較できるなら、パワフルなケーターハムや、フロントにV型12気筒を搭載したフェラーリくらいかもしれない。
間髪を入れない反応と高度なバランス、アクセルペダルでのラインの調整しろ、刃物のように鋭いハンドリング。動的特性でいえば、アストン マーティンやベントレーより、ミドシップのF8トリブートに近い。確かに現代のフェラーリらしい。
このドライビング体験に、ローマには2+2の実用性と、称賛に値するほどのクルージングマナーを共存させている。筆者の印象では、動的な能力の幅はコンチネンタルGTやDB11を超える。見事なサウンドも同様だ。
長時間の運転を楽しんだ後、自宅まで再び長距離を運転する必要があるなら。恐らく読者は、アストン マーティンかベントレーの、どちらかを選びたいと思うだろう。両車が備える特長通り、車窓の景色を楽しみながら家路を快適に急げるはず。
しかし筆者なら、フェラーリ・ローマの印象を振り返りながらベッドで眠りにつくと思う。人生でそうそうお目にかかることはできないほど、壮観なスポーツ・グランドツアラーだ。