【目指すは本物の四輪駆動】イネオス・グレネーダー 試作車へ試乗 ディフェンダーを再設計 後編
公開 : 2021.07.05 19:05 更新 : 2022.08.08 07:29
セパレート構造がゆえの悪路性能
開発段階ということで、最新のステアリング用ソフトがインストールされておらず、高速域での正確性やセルフセンタリング性が充分ではなかった。だが少なくともロールの発生は漸進的で、ステアリングを介してどこまで攻め込めるか、把握はしやすい。
最小回転直径は13.5mと大きいが、ハイルマンが付け加える。「まだ改良途中です。大幅に改善できるソリューションを、いくつか候補として検討中です」
ボディロールは小さくないにしても、グレネーダーのコーナリング速度は意外に速い。軽くない車重にオフロードタイヤということもあって、グリップ限界はすぐに逢えるのだが。
印象としてはオールドファッションだ。でも、ゆったりとしたボディの動きは魅力でもある。急がずに、想定された速度で気持ちよく運転したいと思える。意図した通りの速度で開けた道を流せば、最高に心地いい。
今後数か月の間に、グレネーダーのスペックが決定されていく。アプローチやデパーチャー・アングル、渡河水深などのオフロード性能に関わる数字も含めて。
シェークル山の手強いオフロードコースを走破した能力を見る限り、従来的なセパレート構造を採用するというイネオス社の決定は正しかったといえる。モノコック構造では、アクスルの可動範囲も含めて、同等の悪路性能は実現できなかっただろう。
改めて新鮮に感じるような本物さ
グレネーダーなら、現代的な構造のオフローダーでは到達できない場所へも進むことができる。加えて設計も素晴らしい。メカニズムの剛性感や操作系の重み付けなど、各部にドイツ車のようなカシっとした質感が備わっている。
開発途中ではあったが、完成車の見通しは明るそうだ。オフローダーのカテゴリーを塗り替えるほどではないかもしれないが、実力はトップクラスになるはず。
オンロード走行時の質感にも充分な訴求力がある。アルプス山麓の試乗コースでの体験を振り返れば、ローレンジ・モードを用いたオフロードの走破性は無敵級だった。
大手の自動車メーカーには相手にされないような、特定の人々には間違いなく響くであろう、独特の個性を備えている。改めて新鮮に感じる本物さがある。
セパレートフレーム構造だから、といういい訳が不要な完成度を獲得するのではないかと、期待させてくれるプロトタイプの試乗になった。
イネオス・グレネーダー・プロトタイプのスペック
英国価格:4万ポンド(616万円/予想)
全長:4927mm
全幅:1930mm
全高:2033mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:2650kg(予想)
パワートレイン:直列6気筒2998cターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:287ps
最大トルク:45.8kg-m
ギアボックス:8速オートマティック+2速トランスファー