【モダンに再定義】マイナーチェンジ遂げたミニの「デザイン」 デザイン部門責任者に聞く

公開 : 2021.07.02 05:45  更新 : 2021.10.13 15:26

「デザインをよりピュアなものに」

「今回のマイナーチェンジで、わたしはミニのデザインをよりピュアなものにしたいと考えました」

ハイルマー氏はそう語り始めた。

マイナーチェンジしたミニとオリヴァー・ハイルマー氏
マイナーチェンジしたミニとオリヴァー・ハイルマー氏

「ここでいうピュアにするというのは、必要に応じてコンポーネントの数を減らすことを意味しています。たとえば新型では新しい高機能なヘッドライトを採用することで、これまで独立していたポジショニングライトやフォグライトを省略することができました」

「その代わりに新型ではエアカーテンを設け、空力性能を大幅に向上させています」

グリル内のバンパー部分をボディ同色にした理由をハイルマーは「よりクリーンなデザインにするため」と説明し、結果として「フロント全体のデザインが一体感を強めたものになったと自負しています」と語った。

もう1つ特徴的なのは、クーパーSではフロントグリルの低い部分に2つのエアインテークが追加されている点にある。これについてハイルマーは次のように語った。

「新しいミニを見たとき、どんなエンジンが積まれているかをひと目でわかるようにしたいと考えました。そこで、高性能なエンジンを積んでいて冷却能力を強化する必要があったクーパーSについては、このようなエアインテークを追加しました」

「結果としてクーパーSはよりスポーティに、そしてスタンダードなクーパーはよりエレガントなデザインになったと考えています」

美しく面白い「マルチ・トーン・ルーフ」

新型ミニのデザインを語るうえで忘れることができないのが、マルチ・トーン・ルーフと呼ばれるルーフ部分の新しい塗装方法だろう。

会場に展示されていた車両でいえば、ルーフの前端部分は濃いブルー、そこから明るいブルーに転じたうえで、後端はブラックでペイントされている。しかも、この3色がグラディエーションで連続的に変化していることが、マルチ・トーン・ルーフの大きな特徴である。

マイナーチェンジしたミニとオリヴァー・ハイルマー氏
マイナーチェンジしたミニとオリヴァー・ハイルマー氏    ミニ

このユニークな塗装方法が生まれた背景について、ハイルマー氏はこう説明した。

「ミニのルーフはいつでも特別なものでなければいけません。あるとき、デザイン・チームの1人が『もしも前のクルマを塗装するペイントが残っている状態で次のクルマを塗装したら、どうなるだろうか?』と思いついたことが、マルチ・トーン・ルーフが生まれるきっかけとなりました」

「このメンバーがすぐにイギリスのオックスフォード工場に飛んで試したところ、想像以上に面白い効果の塗装ができあがりました。そこで、すぐにこれを採用することが決まりました」

ただし、安定したグラディエーションを再現し、万一の修理のことまで考慮して完成させるまでのプロセスは容易なものではなかったとハイルマー氏は振り返った。

「塗装は完全に自動化されていますが、それでもちょっとした温度や湿度、塗料を送るパイプ内の流速などによって仕上がりが微妙に異なります。この『コントロールされた不完全さ』を備えている点に、わたしはマルチ・トーン・ルーフの大きな魅力を感じています。

記事に関わった人々

  • 大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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