【詳細データテスト】フォード・マスタング・マッハE 長い航続距離 遊べるシャシー 愛すべきEV
公開 : 2021.07.03 20:25 更新 : 2021.07.08 13:04
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
フォードのデザイン部門を率いるジェイソン・カストリオタは、かつてフェラーリ599GTBを手がけた人物だ。彼はフォードの至宝を、マッハEに採り入れた。ここでいう宝とは、マスタングの特徴的なデザイン要素だ。
それは何十年にもわたり、軽々しく扱われることのなかったものだ。3本のバー状テールライトやたくましいリアフェンダーの造形、高く長いボンネットと後ろ寄りのキャビン、そして怒り眉のかかったようなヘッドライト。そのどれもが、この電動クロスオーバーには見出せる。
また、ルーフパネルをグロスブラックとしたことで、その背の高さや大きさを目の錯覚で紛らわし、ボディラインをクーペのように見せている。そのどれもが、マスタングのデザイン的なDNAをすばらしく忠実に解釈している。もっとも、そこを最優先すべきだと思うかどうかは、ひとによって違うだろうが。
プラットフォームは、グローバル・エレクトリファイド1と呼ばれる。実質的には、フォーカスやクーガに用いられるC2プラットフォームを大幅にモディファイしたものだ。車体の占有面積はポールスター2とメルセデス・ベンツEQCとの間で、どちらかといえばEQCに近い。マッハEのほうがホイールベースは長く、全高は1mmだけ低い。
車両重量は2010kgで、このサイズのEVとしては軽いほうだ。それが、テスラ・モデル3のロングレンジより30kmほど長い610kmの航続距離を、このエクステンデッド・レンジが可能としていることの一因だろう。
もちろん、キャビンの床下いっぱいに敷き詰められた、99kWhもの容量を持つリチウムイオンのバッテリーパックによるところもまた大きい。これよりも軽量で安価な76kWh仕様も用意されるが、航続距離の公称値は440kmほどに低下する。
バッテリーのサイズとともに、購入時に選択の余地があるのは駆動系のレイアウトだ。テスト車のようなリヤマウントのシングルモーターのほかに、フロントにもう1基のモーターを搭載するハイパフォーマンスな4WDがラインナップされている。最高出力は、シングルモーターのRWDが294psなのに対して、ツインモーター4WDに大きいほうのバッテリーを組み合わせると351psになる。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。テスト車はパッシブダンパーとコイルスプリングの組み合わせだが、準備中のGTグレードには磁性流体ダンパーのマグネライドが装着され、出力は487psに引き上げられる予定だ。