【詳細データテスト】フォード・マスタング・マッハE 長い航続距離 遊べるシャシー 愛すべきEV
公開 : 2021.07.03 20:25 更新 : 2021.07.08 13:04
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
ハンドリングに関しては控えめなクラスにあって、われわれがマッハEをほめたい最大のポイントは、その走りが間違いなくフォードのものだとわかることだ。
おそらく、視覚的に車種がわからない状態で運転しても、フォードの速いクルマだということはわかるはずだ。それも、前後モーターの4WDがもたらすスタビリティのない、後輪駆動仕様ではとくに。
マッハEは、2tを超える電動クロスオーバーではあるものの、ポールスター2が重視しているような無表情なまでのニュートラルさの先にあるものを見据えようとしている。そして、とりわけウェットコンディションでは、ドライバーが驚くほど何もしなくても小さなヨーが出るが、それでも気持ちよく走れる。
比較的細いタイヤを履いているので、運動性のやんちゃなところはこのクラスにおいて際立っている。ほかのクルマは全体的に、電動化で後輪駆動レイアウトを採っても、それらしいところを見せることはほぼない。
といっても、フォードはそこをやりすぎてはいない。ロックトウロック3.7回転のステアリングは、このクラスの水準に照らしてもスローだ。また、切りはじめの反応は、いわゆるレスポンスのよさより信頼性を優先したチューンとなっている。ボディのロールもそれなりにある。
にもかかわらず、このクルマがルーズでイヤになることはめったにない。というのも、そのロールと、融通性のあるスタリングの動きがよくマッチしているからだ。とくに、走りを楽しめるようなB級道路でよく出す速度域では。それによって、気持ちよく走るのが自然に感じられる。
たしかに、俊敏さより安定性を重視して、車重やソフトさを決して打ち消さないクルマもある。ところがマッハEは、走りに楽しさがあり、それでいてそこそこのアキュラシーも備えている。そこは本家マスタングにも通じるところがある。
あるテスターは、こんなことを口にしていた。グリップも精確さも十分で、アウディe-トロンよりジャガーIペイスを、もしくはプジョーe-208よりミニ・エレクトシックを選ぶような走り志向のドライバーにウケるのではないか、と。
だからといって、目から鱗というほどのものではない。やはり重さは否定できず、ステアリングフィールは乏しく、どうにもモヤモヤ感が拭えない。RWD仕様はあくまでもベーシックモデルに過ぎず、このクラスの型にはまらない走りを得た代わりに、全天候型のトラクションとスタビリティを犠牲にしている。