【蓼食う虫も好き好き】フィアット・ムルティプラ 美しくも醜い「魅力」に迫る
公開 : 2021.07.03 06:05 更新 : 2021.07.27 14:44
エクステリアデザイン
このパッケージの成功は、当時のフィアットの経営陣であったパオロ・カンタレラが設定した厳しい条件を考えれば、なおさら驚くべきことだ。限られた予算で開発され、少ない生産量でも利益が出て、6人とその荷物が入るスペースがあり、代替燃料にも対応できる柔軟性がある。
本質的には、ハッチバックに大きなキャビンを載せたものだ。他の多くのクルマとは異なり、ムルティプラは底が広く始まり、中央で狭く、そしてルーフに向かってまっすぐに伸びている。これは、ジオリトが経営陣の要求を満たすための唯一の方法で、「コーヒーポット」と呼ばれるようになった。フロントガラスの下にあるライトはハイビーム用だ。
インテリアデザイン
この俯瞰写真は、フィアット・ムルティプラを6人乗りにしたときのもの。時は1990年代。テディベアの数とダブルデニムの完全な過重積載に注目。
車幅があるので、フルサイズのシートを6つ載せることが可能だった。7人乗りSUVの3列目シートに押し込まれたことのある人なら、これがどれだけ贅沢なことか分かるだろう。
フロアがフラットなので足元や荷物を置くスペースが広く、リアシートを取り外せば3人乗りのワゴン車にもなる。4人乗りの場合は、中央の2つのシートを前に倒すと、収納トレイと8つのカップホルダーが現れる。
ダッシュボード
市販モデルでは1996年のコンセプトを踏襲し、ダッシュボードの高い位置にあるセンタークラスターに操作系をまとめた。ダイヤル、プライマリーコントロール、シフトノブはドライバー側に向けて配置され、助手席側には収納トレイやコンパートメントが配置されている。
素材や色を巧みに使うことで、ムルティプラは、「象皮」からデザインのインスピレーションを得たような同時代のMPVのライバルたちに差をつけた。
エンジン
エンジンは、1.6Lのガソリンと1.9Lのディーゼルを搭載し、一部の市場ではLPG仕様も用意された。パフォーマンスは刺激的というよりも、むしろ活発であったが、ムルティプラのワイドなスタンスは、驚くほど運転しやすいものであった。
この画像からもわかるように、フィアットはハイブリッド車の導入を検討していた。1.6L 16バルブのガソリンエンジンと三相電気モーターを搭載した「ムルティプラ・ハイブリッド・パワー」は、プロトタイプとして公開された。
フェイスリフト
フィアットは、このクルマの生産を中止した。大胆で個性的なスタイリングへの批判にさらされたフィアットは、2004年夏にフェイスリフトを実施し、ムルティプラは個性的というよりは派生的な外観になった。標準的なヘッドライトと再構築されたボンネットが、期待外れのモデルチェンジの目玉となった。
販売台数を見ると、2003年は2万1305台、2004年には2万1278台と、徐々に減少している。フェイスリフトはすぐに効果を発揮し、2004年には3万674台に回復した。しかし、その効果は一時的なもので、2007年にはフェイスリフト前の水準に戻ってしまった。