【蓼食う虫も好き好き】フィアット・ムルティプラ 美しくも醜い「魅力」に迫る
公開 : 2021.07.03 06:05 更新 : 2021.07.27 14:44
ホンダFR-V(エディックス)
フェイスリフトと同時期に、ホンダは6人乗りのMPV、FR-V(日本名:エディックス)を発売した。FR-Vは、CR-Vやストリームに代わる家族向けのMPVとして、フェイスリフト後のムルティプラよりも個性的なデザインを採用していた。
2009年に生産を終了したが、FR-Vに後継モデルがなかったことは、6人乗りMPVの需要の低さを物語っている。そして、新しいタイプのクロスオーバーが注目されていたことも、廃止の理由だろう。
2010年に生産終了
イタリアでの生産は2010年に終了し、その時点で年間販売台数は8604台にまで落ち込んでいた。2011年に最後の466モデルがフィアットのショールームを去り、累計販売台数は約33万台となった。しかし、ルノー・セニックやオペル・ザフィーラに比べれば大したことはない。
ここで特筆すべきは、スバーロ・ムルティプラ・マルチドア(画像の車両ではない)だ。フィアットはスバーロに依頼して、2006年のトリノ冬季オリンピックのために6ドア8人乗りモデルを2台製作した。ムルティプラの多用途性を示す一例である。
Zotye M300
Zotye Automobile(衆泰汽車)のM300は、2008年から2010年にかけて中国でCKD(Complete Knock Down)キットを用いて生産・販売されたムルティプラで、Zotyeムルティプラの名で呼ばれていた。
生産終了となった2013年、Zotye社はEVバージョンを開発した。「M300 EV」と名付けられたこの電動MPVの航続距離は約160kmで、わずか220台が生産された。少数ではあるが、これもムルティプラの多用途性を示す一例である。
フィアット500L
フィアット・ムルティプラがゆっくりとした死を遂げた一方で、自動車デザイナーのロベルト・ジオリトはフィアットで成功を収め、2007年には新型500のデザインを担当した。
また、ムルティプラよりも美しいとは言えないことで有名なフィアット500Lのデザインも手掛けている。この2つのMPVの根本的な違いは、一方は最大限のスペースを確保するために内側から設計され、もう一方は成功したフィアット500のスタイリングを採用せざるを得なかったということだ。
フィアット・ムルティプラ
ムルティプラはどのように記憶されるべきだろうか。
醜い?いや。スタイルに問題がある?そうかもしれない。個性的か?それは間違いない。
ムルティプラを好きになることはできなくても、その個性と魅力には間違いなく惹かれるだろう。現代の名車であるムルティプラが英国で発売されて21年になることを記念して、英AUTOCAR編集部が紹介した。