【最後の限定車】ルノー・カングー・リミテッド・ディーゼルMTに試乗 驚く完成度
公開 : 2021.07.05 12:15 更新 : 2021.10.13 12:02
ディーゼル×MT「ちょっとした驚き」
そんな特別なカングーの乗り味は、ちょっとした衝撃だった。乗る前のイメージとは大きく違ったからだ。
カングーの神髄は商用モデルだから、ディーゼルエンジンは雑然としたフィーリングだとイメージしていた。音はガラガラと煩めで、フィーリングはザラザラとしたガサツな感じ。良くも悪くもディーゼル的で「力はあるけどなんか事務的だよね」といった乗り味だと想像していたのだ。
しかし、実際はまったくもってそうではなかった。エンジンを掛けるとまず、音をしっかりと抑え込んでいることに気が付く。耳障りな感覚は微塵もない。
もちろんこれは今どきのディーゼル乗用車としては当然のことなのだが、カングーの基本は商用車である。
だから音が煩いかもと考えていたのだが、それは相手を見くびり過ぎていたようだ。
ディーゼルエンジンは一般的にアイドリング中がエンジンからの騒音をもっとも感じやすいから、この時点で音が静かと言うことは、走行中の状態は言うまでもないだろう。
振動だって上手に吸収されていて、ガソリン車との違いが分からないほどだ。
発進してみる。太いトルクのおかげで、クラッチミートにデリケートさは微塵もない。ちょっとルーズにクラッチを離してもグッとボディが押し出されて走り出すから、ストールの兆候など一切ないのだ。
トルクの太さゆえにギアチェンジをサボれる(ガソリン車ならシフトダウンすべき状況でもそのまま走れてしまう)ことも含め、MTとしてはきわめて運転が楽だ。
もっと早く導入すればよかったのに……
加速は、さすがディーゼルである。効いているのは最大トルクだ。26.5kg‐mとガソリン1.2Lターボに対して約1.4倍の力強さがあり、それをわずか2000rpmで発生するから停止状態からの発進加速でグイグイとクルマを押し出してくれる。
回転数を上げなくても湧き出してくる太いトルクのおかげで、アクセルを踏み込まなくても加速が力強いのがディーゼルの魅力。そんなエンジンを、6速MTを駆使して走れるのだから、楽しくないわけがない。
エンジンが滑らかなのも予想外だった。乗る前は「粗さを感じるエンジンでも道具的なカングーには似合っているかな」……なんて考えていたのだが、まったくもってそんなエンジンではなかった。
最高回転数が低く、高回転の爽快感がないことを除けば、ディーゼルとではなくトルクの太いガソリンエンジンかと錯覚してしまうほどだ。
ちなみにディーゼルエンジンは排ガス処理システムとして尿素SCRとDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)を組み合わせている。また、日本向けに制御などは煮詰められているという。
それにしても、こんなに印象のいいディーゼルエンジンなら、もっと早く導入すればよかったのにと悔やまれるばかりである。
このパワートレインは、荷物をたっぷり積んでお出かけするカングーのキャラクターにはとてもマッチングがいい。
ハッキリ言おう、マニュアルシフトさえ気にならないのであれば、カングー2のベストバイだ。
ところでこの限定車は見た目もちょっと特別で、ブラックバンパー(人気の特別仕様車「クルール」タイプ)に、ホイールはキャップすらないスチール。
でも、カングーにとってはその質素な感じがまたいいのだ。
バンパーのデイタイムランプは、日本においてはこのモデルだけの専用アイテムだ。
買えたラッキーな人は、所有中だけでなく手放すときにも笑顔になれることだろう。
ルノー・カングー・リミテッド・ディーゼルMTのスペック
価格:282万円
全長:4280mm
全幅:1830mm
全高:1810mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1520kg
パワートレイン:直列4気筒1460ccディーゼル・ターボ
最高出力:116ps/3750rpm
最大トルク:26.5kg-m/2000rpm
ギアボックス:6速マニュアル