アウディS3サルーン

公開 : 2014.03.13 22:50　　更新 : 2017.05.29 18:18

■どんなクルマ?

新しいアウディS3サルーンを英国の路上でテストする機会に恵まれた。300psのエンジンとクワトロ・システム、そして多くのドライバー・エイド・システムを持つクルマだ。

エンジンは既にお馴染みになったフォルクスワーゲン・グループのEA888、2.0ℓTFSIを搭載する。完全に再設計されたダイレクト・インジェクション、バランサーシャフト、高いインジェクション圧、バリアブル・バルブ・タイミング、インテリジェントなクーリング・システム、統合されたエグゾースト・マニフォールドなどが組み込まれたものだ。エンジン自体の重量は、前のユニットよりも5kgほど軽くなっているが、ジュネーブ・モーターショーで発表されたTTクワトロ・スポーツでは同じ形式のエンジンで420bhpを発揮し、そしてそれに耐えうるようになっていることからも、相当にタフな作りがされていることがわかる。しかも、パワーは前のS3よりも35ps高い。

パフォーマンスは、0-100km/h加速が6速マニュアル・トランスミッションよりも0.4秒速い4.9秒というタイムがこの7速Sトロニック・モデルの値だ。燃費も0.2km/ℓほど良い14.5km/ℓ、CO2排出量も159g/kmと低く抑えられている。

エンジンが軽くなったほか、アロイのフロント・サブフレーム、アルミニウム製のボンネットとフロント・ウイングなどによって、ボディ重量は1430kgとなっている。ちなみに、サスペンションはアロイで形成され、マグネティックライドが装備される。

ホイールベースはS3スポーツバックよりも35mm長く、そのトレッドはライバルであるBMW M235iよりも広い。

エクステリアでは、A3よりも25mm低いサスペンション、フロント・ディフューザー、追加されたエア・インテーク、シル・エクステンション、19インチ・ホイール、4本出しのエグゾースト、トランク・スポイラーなどが特徴だ。また、インテリアは”パレード・レザー” パックが装備される。それはおどろくほど柔らかいだけでなく、派手な赤いカラーがアクセントに使われている。

■どんな感じ?

速くて楽なクルマだ。特に7速Sトロニック・モデルはなおさらだ。すべてのギア・ポジションからでもそのシフトは素早い。エグゾーストから奏でられるサウンドはツーリングカー・レーサーのようでもある。また、ギアのレシオも適切だ。

ただし、悲劇的な何かがエンジンのパワー・デリバリーになるようだ。トルクカーブの落ち込みが感じられる。それは、例えば2速にホールドしてエンジンを1100rpmから徐々に上げていくとわかるはずだ。しかし、実際には7速Sトロニックのクロス・レシオが、その特性をカバーしてくれることとなる。6速マニュアルでは、そうはいかない。若干のもたつきが感じられるはずだ。

クワトロ・システムはトルク・ステアをよく抑えこんでいる。ちなみに、このクワトロ・システムは洗練されたトルセン・デフではなくハルデックスが採用されている。タイトなコーナーでもアンバランスさは感じない。

乗り心地は堅くはあるのだが、しなやかである。通常の走行であれば、快適なものだ。しかし、スポーツ・モードを選ぶと、縦方向のバンプは激しくなる。

アウディS3の運動性能で弱点があるとすれば、それはそのステアリングだ。ハルデックスとの組み合わせで、中速コーナーでセンター付近の曖昧さが気になるのは事実だ。

■「買い」か?

確かに弱点はあるが、S3は総じて魅力的なクルマだ。インテリア、エクステリア共にハンサムだし、サウンドも満足なものだ。すべてのアウディに共通するように、きれいに整えられたツールということができよう。

インゴルシュタットにとって気になるのは、ライバルのBMWが有するM235iというドライバーズ・カーは、このS3よりもダイナミックなシャシーとステアリングを持っているということだ。

(リチャード・ブレムナー)