【11台のコレクション】オースチン・セブン 高級ブランド・ディーラーの起点 後編
公開 : 2021.07.31 17:45
英国ではロールス・ロイスの第一人者として知られるポール・ウッド。多くを経験してたどり着いたのは、起点となった戦前のオースチン・セブンでした。
買わずにはいられないクルマとの出会い
英国周遊の旅に出ていた、オースチン・セブンをコレクションするポール・ウッド。「最北の岬、ジョン・オ・グローツからの帰路で、ロールス・ロイスの新型ドーン発表の電話が。グラスゴー空港の駐車場にルビーを残し、カリフォルニアへ向かいました」
ロサンゼルスから戻ると、ポールは旅を続行した。「西部のウェールズは諦めて、南部のドーバーとハーウィッチを経由して、自宅へ戻りました。セブンで、素晴らしい経験ができました」
「どこへ向かっても、好意的に人々が受け止めてくれます。手を降って挨拶する人も。新しいロールス・ロイスでは、こんな反応はないでしょうね」
ポールは当初、セブンをコレクションするつもりはなかったらしいが、買わずにはいられないクルマを発見するたびに台数は増えていった。その1台が、1925年のドクターズクーペだ。
「パリで開かれたルイ・ビトン・コンクールで一目惚れしました。オリジナルはオースチンの創業者、ハーバートの娘に作られたクルマでしたが、その後は所在不明です。このレプリカは数枚の写真をもとに、ジョン・ヒースによって作られています」
「彼の職人技は見事としかいいようがありません。ホイールリムやニワトリのマスコットも、彼の手作り。とても快適で、オースチンが増産しなかったのが残念ですね」
彼のコレクションには、ヒースが手掛けた別のセブンも含まれている。「バンを探していました。木造の部分も素晴らしく、ドアの建て付けも完璧。フォルムもディティールも好きです」
セブンがベースの芝刈り機も
「ヒースはクルマの後ろに模造のカニや卵、魚を積むディスプレイも仕上げています。ウサギとキジはぬいぐるみ。初期モデルの、1923年製シャシーが用いられています」
「ビードエッジ・パターンのクラシックなタイヤを履くと、グリップがなくなり、ステアリングもいうことを聞かなくなります。でも、古いシルバーゴーストの運転にも慣れていますからね」
コレクションで珍しい1台といえば、1925年に作られたショートシャシーの芝刈り機。「農業機械で有名だったシムズ&ジェフリーズ社によって作られた、唯一のセブンだと思います。この歴史は、もう少し詳しく知りたいところです」
「後ろにはがっしりしたタイヤがあり、芝刈り用ブレードのフリクション駆動機構が付いています。エンジンの調子は良いですが、芝刈り機としては役立たずです」
「フロントのスプリングシャックルを逆にした、低い車高の雰囲気が好き。オークションで、予算を超えて妻が手に入れてくれたものなんですよ」
ポールの娘、ジョージナ夫妻がオーナーの、スコーチャーと名付けられたセブンもレアだ。「ボディは、ロンドンの北のセント・オールバンズに住むマイク・ハリスによって作られましたが、朽ち果てていました」
「クリスマスプレゼントとして、ダッシュボードを作り直し、新しいメーターを入れました。来年はスーパーチャージャーを組もうと考えています。ベントレー・ブロワーのように、前に載せるつもりです。夫のベンも気に入っているようです」