【11台のコレクション】オースチン・セブン 高級ブランド・ディーラーの起点 後編
公開 : 2021.07.31 17:45
マクラーレンが乗っていたアルスター
セブン病は娘にも伝染したらしい。彼女は、1928年式のボックス・サルーンも所有している。地元で開かれるラリーへ参加するために。
ポールのコレクションでは、スポーツモデルの進化も楽しむことができる。セブン55と、ニッピーという愛称のセブン65、ゴードン・イングランドとスピーディと呼ばれた4台がある。
「子供の頃、120km/hの最高速度を持つスピーディに憧れていましたが、非常に高価でした。特別なクランクにクロスレシオのギアが組まれた、23psのエンジンが載っていたセブンです。しかし売れずに、300台も作られていません」
スポーティなセブンのリストを完成させるため、最近加わったのがアルスター。「オリジナルは見つからず、5年前にレプリカを手に入れました。ボディは完璧を求めたいので、ボンネットなどの収まりは気にします」
「サイクルフェンダーでしたが、オリジナルのフェンダーを見つけて交換ました。こちらの方が見た目がずっと良い。部品を探すのも楽しい挑戦です。中古部品の販売会、オートジャンボリーも大好きです」
「実は失読症で、コンピューターは使えません。ネットオークションも見ないんです。仕事では、今はロールス・ロイスの塗装に取り組んでいます。春に完成させる予定でしたが、コロナウイルスで狂いました」
「最近マクラーレンに招待され、そこのコレクションで目にしたクラシックが、創業者のブルース・マクラーレンが乗っていたオレンジ色のオースチン・セブン・アルスター。ロータスも、セブンが始まりなんです」
夢の1台はツインカムのシングルシーター
小さなオースチンは、ジャガーを創業したウイリアム・ライオンズとも結び付きがある。彼が関わったセブン・スワローも外せないモデルだ。「前オーナーはお医者さんでした」
「彼は傷んだ状態のスワローを発見し、アッシュ材のボディフレームまで自身でレストアしたそうです。標準のセブンより重く、運転は難しい。でもスタイリングは好きです」
プジョー・クアドリレットも所有している。セブンの設計に影響を与えた、同時期のモデルだからだ。「4気筒の水冷エンジンに、Aフレームのシャシーと横向きのフロント・リーフスプリング・サスペンションなど、似た特徴を持ちます」
「しかし同様には運転できません。ノイズや風の巻き込みも大きく、妻が後ろに座ると会話できないくらい」
ポールがコレクションに加えたい夢のセブンが、ツインカム・エンジンのシングルシーター。「3台が作られ、現存は2台だけ。とても美しく評価も高かったセブンです」
「スーパーチャージャー付きサイドバルブのレーサーが理想ですが、残っているのが1台という希少さ。レプリカでも充分です」
セブンがベースのトラクターも探しているそうだ。数台が農園のためにオースチンの工場で作られた。2基の3速トランスミッションが乗り、ソリッドホイールを履いているという。社外でも少数が作られている。
「何台かが、蒸気機関の見本市に出展されました。非常に珍しいセブンです。コレクションに加われば、芝刈り機と良いペアになるでしょうね」