【6.5L NA V12から830ps】ランボルギーニ・エッセンツァSCV12へ試乗 40台限定
公開 : 2021.07.14 08:25
回転数に合わせて線形的に増大するパワー
モード、とシンプルに表記されたスイッチは、最高出力のリミッター。1を選ぶと約659psへ絞られ、数字が大きくなるほど最高出力も増える。5を選ぶと、怒り狂った830psが引き出される。試乗では、終始5のままだった。
マナー良くエッセンツァSCV12を発進させるのは、簡単ではない。ウラカン・スーパートロフェオにはクラッチペダルが残っているが、こちらは自動クラッチを採用した2ペダル。ピットを穏やかにスタートしたいと思っても、タイヤが悲鳴を上げる突進になる。
ピットレーン用のスピードリミッターが付いている。騒々しいものの、スピードは60km/hに保たれる。
コースインしてリミッターが解かれると、巨大なパワーがドライバーへ襲いかかるが、荒々しすぎることはない。ターボチャージャーで過給するハイパーカーとは異なり、自然吸気のV12は低回転域の急激なトルクの山がない。
回転数が高まると同時に、線形的にパワーが増大していく。同時に鼓膜が痛くなるような排気音が、ヘルメットを通じて響いてくる。
路面温度が50度あれば、ピレリ社製のスリックタイヤはほぼ温める必要はない様子。グリップ力は、レース用タイヤとして当然のように強烈。公道走行が許されるスポーツタイヤのような多少の自由度もないことは、コーナーを数回曲れば理解できる。
ヴァッレルンガ・サーキットのタイトコーナーでは、タイヤの限界を超えて攻め込むこともできた。リアタイヤのグリップ力は突然抜ける。トラクション・コントロールがありがたい。
横方向の強い力で首の筋肉が疲れる
高速コーナーでは、ダウンフォースが強力に機能。グリップを失わせることは不可能にすら思える。多くのドライバーにとって、エッセンツァSCV12を運転するうえでの制限は、首の筋肉かもしれない。横方向へ強い力が連続的にかかり、疲れてしまう。
スリックタイヤを履くマシンらしく、ステアリングは正確。だが可変アシストの量を一番弱い状態にしても、手のひらに伝わるフィードバックは非常に少ない。ウラカン・スーパートロフェオも似た感触だった。
試乗車のプロトタイプが装備していたブレーキは、一般的なスチール製。オプションで、カーボンディスクも選べるという。
筆者が最初に走ったスティントでは、期待したほどの制動力が得られない印象だった。しかしル・マンでの優勝経験が5回もあるレーサーのエマニュエル・ピロの説明を聞くと、充分に強くペダルを踏めていないことがわかった。
走行記録を確認すると、筆者が一番強くペダルを踏んだ時のブレーキラインの圧力は72bar。巨大なキャリパーを充分機能させるには、100bar以上掛けないとダメらしい。
2回目のスティントで、ブレーキペダルを目一杯踏む。制動距離は短くなるものの、ペダルストロークが長すぎるように感じた。それにサウナのように熱い車内で、力いっぱい体を動かすのは楽なことではない。