【小型商用車として再導入】スズキ・ジムニー・シエラLCVへ試乗 魅力は変わらず
公開 : 2021.07.15 08:25 更新 : 2022.08.08 07:28
小さなオフローダー、スズキ・ジムニー・シエラ。リアシートなしの商用車として英国へ再導入が決まったLCV版を、英国編集部が評価しました。
小型商用車でCO2規制を乗り越える
欧州では一度販売停止に至ったが、不死鳥のようによみがえったスズキ・ジムニー(ジムニー・シエラ)。英国市場には、商用車のバンという道筋があった。ちなみに日本では普通車規格のジムニー・シエラが、欧州ではジムニーとして売られている。
4代目ジムニーが英国へ導入されたのは2018年。高い人気でバックオーダーを抱えるほどだったが、小さいボディの割にCO2の排出量は多かった。欧州における、スズキのCO2平均排出量を引き上げるリスクをはらんだモデルでもあった。
2021年1月から欧州へ導入された排出ガス規制の強化に先立って、スズキはジムニーの販売を2020年から段階的にストップしていた。そのかわり、英国ではN1と呼ばれる小型商用車(LCV)仕様として、2021年から再導入されることになった。
商用車のバンなら、販売しても自動車メーカーのモデル平均でのCO2排出量に影響は与えない。95g/kmという規制を超えても大丈夫。商用車には緩い規制が適用されることが理由になる。
その結果スズキ・ジムニーLCVは、小型バンのスズキ・キャリー以来となる、日本ブランドとしては珍しい英国での小型商用車になった。厳しい規制の中で、人気のジムニーを販売するため、やむなく選ばれた手段といえる。
LCV仕様になったからといって、ジムニーの個性は従来と変わりない。パワートレインやサスペンション、ボディも乗用車仕様の時のまま。英国では1.5Lのガソリンエンジンが、101psと12.9kg-mを発揮する。トランスミッションは5速MTだ。
リアシートは省かれ荷室は拡大
衝突被害軽減ブレーキや、eコールと呼ばれる通話によるアシスト、タイヤの空気圧センサー、ヒルホールドやヒルディセント・コントロールといった、運転支援の機能もそのまま受け継がれている。
パートタイム式四輪駆動にも変更はない。コイルスプリングが支える、3リンクのリジッドアクスル・サスペンションも従来どおり。LCVに付いてこないのは、小さかったリアシートだ。
フロントシート側と荷室とを仕切るため、バルクヘッドが追加され、スチール製のメッシュが張られている。LCVとして登録する上で、英国では900mmの奥行きを持つ荷室が求められる。そのためフロントシートは10mm前方へ移された。
荷室容量は863Lを得ている。従来の乗用車仕様のリアシートを倒した状態より、33Lほど広い。
従来のトップグレードで選択できた、タッチモニターによるナビゲーションも選べない。ブルートゥース接続が可能な、デジタルラジオに置き換わる。でも、マルチファンクション・ステアリングホイールと、エアコンが付いてくるから不満はないだろう。
メカニズム的な変更はないから、スズキ・ジムニーLCVは、以前と変わらずオフロード性能に長けている。小型商用車だとしても、スズキは従来どおり、オフロード走行を好むドライバーからの注文を期待している。
ホイールは、ブラックに塗られたスチール・タイプを履く。