【群サイで試す】新型フィット・モデューロX 違いが分かる44万円差、ホンダアクセスのレシピ

公開 : 2021.07.12 06:45  更新 : 2022.01.07 01:53

フィットを超えるのは、フィット

横Gを受けた状況での制動も安定。減速でコーナリングラインを絞り込むのも容易である。

ノーマル車での苦労は一体何だったのか、と思わせるほどに修正操作頻度が激減。ハイアベ走行における肉体的精神的なストレスの少なさに感心させられる。

ホンダ・フィットe:HEVモデューロXの前席内装(インテリアカラー:ブラック)
ホンダフィットe:HEVモデューロXの前席内装(インテリアカラー:ブラック)    前田恵介

となれば「モア・パワー」となるのが、スポーツ走行好きの悪い癖。

モデューロXは、操安性が完全に動力性能を上回っている。ファントゥドライブはともかく、走行性能面の安全性という視点でも、モデューロXはフィットの最上位と考えていい。

一般道・高速道路では?

当たり前の話だが、高速道路ツーリングには群馬CSCのような緊迫した状況はなし。

だが、モデューロXは追い込まれた状況でないと実力を示せないタイプではない。むしろレジャードライブのような一般的な使い方でも長所を実感できるのが、1つのセールスポイントでもある。

下面も含めた車体全周の空気の流れを制御し、空力により接地バランスや挙動安定の向上を図っているのがモデューロX車のエアロチューンの特徴。しかも、高速域限定ではなく、60km/hも出ていれば効果を発揮する実践設計。

このエアロチューンが、意外と中立付近の据わりや微舵応答性の向上にも役立っている。

普通に走って違う ADASにも差

比較すれば、ノーマル車の中立付近は保舵感や反応に曖昧さがある。ただし、適度な緩みがないと中立の保持が神経質になるので、ノーマル車がダメというわけではない。

モデューロXは中立付近の微舵応答がいいにも係わらず、直進の保持が神経質ではない。

混み合う都内の一般道から、首都高、関越道を乗り継いで群馬CSCへ。渋滞から峠道、ADASまで試した実践テストの評価は?
混み合う都内の一般道から、首都高、関越道を乗り継いで群馬CSCへ。渋滞から峠道、ADASまで試した実践テストの評価は?    前田恵介

微妙な保舵感の変化で無意識に中立を保持できる。物理的な直進性も良好である。

この感覚は、一般走行でのコーナリング時でも同様だ。何となく操っているような運転でも狙ったラインに乗っていく。

付け加えるなら、LKA(レーンキーピングアシスト)との相性もいい。

走行ライン維持の自動修正操舵補助の介入の操舵量が少なく短時間。ノーマル車も優秀だが、それでも修正遅れ・修正量が大きく感じられ、制御精度が違うのでは、と思える程だった。

コンプリートカーは「買い」か?

フィットe:HEVモデューロXのベースとなったリュクスとの価格差は、約44万円高である。

ホームをベースに内装のグレードアップなどを施した特別仕様の価格は、ホームの約15万円高。

フード先端の形状変更。ホイールの“しなり”の制御。リフトバランスを高めるスポイラー。Fバンパーの空力デバイスたち。日常の速度域でも体感できる「実効空力」が生み出す、四輪の均等荷重。それにダンパーチューンと専用ホイールを組み合わせたのがモデューロのレシピなのだ。
フード先端の形状変更。ホイールの“しなり”の制御。リフトバランスを高めるスポイラー。Fバンパーの空力デバイスたち。日常の速度域でも体感できる「実効空力」が生み出す、四輪の均等荷重。それにダンパーチューンと専用ホイールを組み合わせたのがモデューロのレシピなのだ。    前田恵介

装備設定も異なるのだが、内装分を同じように計算すればモデューロXのエアロ、ホイールとサス(ダンパー)で約30万円の見当である。

この専用ホイールは注目の逸品で、ベース車対比で1本当たり約2.9kgも軽量。しかも、弾性を利用して路面からの衝撃を吸収する独自リム設計を採用。

ノーマル車に比べて、段差乗り越えなどで車軸周りの揺動感が減少していることを開発陣に尋ねたところ、この専用ホイールの効果だろうとの回答。

一般的なスモール2BOXの価格差で44万円は大金だが、コンプリートカーとしてはかなり安い値付けであり、カスタマイズというよりもライン装着OPに近い。さすがメーカー直系のコンプリートカーである。

しかも、単に雰囲気・嗜好を変えるのではなく、走行性能面での安心感、ストレス軽減、走りの質感の向上など、一般ユーザーの実利も高い。

コアなマニアを相手にするにはちょっと地味すぎる感もあるのだが、だからこそ生活の場にも馴染みやすい。しかも、ロングドライブや山岳路走行で運転しやすく、ハイアベ走行も無難にこなす懐深さ。

ファントゥドライブを求めて選ぶのもいいが、フィットの適応用途となるタウン&ツーリングの「ツーリング」に重きを置く実用派にも勧めたい1車である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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