【GRヤリスを追い回せる】フォード・フィエスタST-3 マウンチューンM260へ試乗
公開 : 2021.07.20 08:25
増強したパワーを受け止めるシャシー
高回転域まで引っ張るのも気持ちイイ。トップエンドに迫るにつれて軽快さが増し、ハードな質感も強まる。小気味なシフレバーを積極的に上下せずにはいられない。0-97km/h加速は、5.7秒でこなすという。
筆者は早めにシフトアップして、低回転域から湧き出るトルクの波を感じる方が好み。スポーツかレース・モードを選ぶと、2本出しのエグゾーストが奏でる不協和音にしびれる。時々響く破裂音も、一興だ。
さらに感心したのが、増強したパワーを受け止めるシャシーの能力。試乗車にはクワイフ社製のLSDが組まれており、タイトコーナーでのトラクションは見事。路面がうねっていたり舗装が荒れていても、まったく意に介さない。
クイックで正確なステアリングの操舵感と、力強く路面を掴むフロントタイヤの組み合わせで、果敢にコーナーへ侵入できる。アクセルペダルを加減すれば、コーナーの頂点めがけてラインも自在に調整できる。
ドライバーの腰のあたりを軸に、M260が回頭していく。優雅に感じるほど流暢に。
トヨタGRヤリス並みに速かったり、操縦性に優れているわけではない。それでも、郊外の道で許される速度域で、クルマを操る自由度が味わえる。訴求力は高いかもしれない。
一方、車高の落ちるサスペンションはボディーロールが小さいが、期待ほど路面に追従する印象もない。攻め込んでいくと少し詰めの甘さが顔を出す。短いスプリングが、標準のダンパーと完璧には調和できていないのだろう。
低速域の乗り心地も落ち着きがない。予想の範囲だが。
最善を尽くせばGRヤリスも追い回せる
ブレーキペダルは、最終的な効きは強力ながらストロークが長く、ABSの介入が少し早いように感じた。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履くが、260psを完全には受け止めきれないようだ。
追ってご紹介できるが、今回はマウンチューン社が手を加えたクロスオーバー、プーマ M260も試乗している。そちらの体験を重ねるなら、フィエスタST標準のサスペンションとブレーキでも、パワーアップへ充分対応できるだろう。
威嚇するような低い車高にこだわったり、サーキットでブレーキングポイントを奥に刻むような走りを求めていないなら、足まわりは標準でも問題ないと思う。予算とお好みでどうぞ。
235ps仕様のM235のオーナーなら、99ポンド(1万5000円)で、パワーアップ版のソフトウエアをインストールできる。真価を発揮させるには、インタークーラーなどのアップグレードも必要だが。
フォード・フィエスタSTを攻撃的なM260へ仕立てるのに必要な費用は、英国では1628ポンド(25万円)から。エグゾーストシステムは、別途599ポンド(9万2000円)が必要になる。
個性豊かでドライバーの遊び心をくすぐってくれる、一層ホットなフィエスタSTがこの追加費用で手に入ると考えれば、決して高いとはいえないだろう。乾燥路面で最善を尽くせば、トヨタGRヤリスを追い回すこともできる。悪くない提案だと思う。
フォード・フィエスタST-3 パフォーマンス・パック・マウンチューンM260(英国仕様)のスペック
英国価格:2万4280ポンド(373万円)/チューニングキット:1628ポンド(25万円)から
全長:4040mm(標準フィエスタ)
全幅:1735mm(標準フィエスタ)
全高:1476mm(標準フィエスタ)
最高速度:241km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1262kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps/5550rpm
最大トルク:37.1kg-m/3250rpm
ギアボックス:6速マニュアル