あなたのクルマ、乗り続けられる? 話題の液体燃料「eフューエル」とは

公開 : 2021.07.14 05:45  更新 : 2021.10.09 23:39

豊田会長のコメントから注目が高まる

古くからあるバイオ燃料に対して、「eフューエル」は、ごく最近になって注目度を高めた。

そのきっかけの1つが、2021年4月の日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長の定例会見だろう。

トヨタ・ミライ
トヨタ・ミライ    トヨタ

その会見で豊田会長から「今、エネルギー業界では水素から作る『eフューエル』やバイオ燃料など、『カーボンニュートラル燃料』という技術革新に取り組まれております。日本の自動車産業がもつ高効率エンジンとモーターの複合技術に、この新しい燃料を組み合わせることができれば大幅なCO2低減というまったく新しい世界が見えてまいります」とのコメントが飛び出した。

また、トヨタのトヨタイムズHP「トヨタ春交渉2021 番外編 労使協で語られた『カーボンニュートラル』の本質」にも「水素を使って、『CO2フリーの化石燃料』をつくろうという技術が、動き始めているのです」

「AIやCASEに磨きをかけて、こうした新しい技術をウーブン・シティで実証実験をおこなうことができます。新しい技術と経済合理性をどう実現していくか、そこがわれわれの技術開発の見せどころだと思います」とのトヨタのカーボンニュートラルを含めた技術部門の特命担当を務める寺師エグゼクティブフェローの言葉も公開されている。

FCVの「ミライ」を発売するトヨタだが、燃料電池とはまた別の水素の利用方法となる「eフューエル」にも注目しているのだ。

燃料電池という、1つの道に賭けるのではなく、可能な限り保険も用意する。体力のある大企業トヨタだからこそできる、全方位的な戦略だ。

10年後に技術確立、20年後にビジネスに

太陽光や風力などの再生可能エネルギーで作った水素と空気中の二酸化炭素を合成させてできる「eフューエル」

言ってしまえば、タダで、いくらでもできて、作るほどに空気中の二酸化炭素が減るという、なんとも都合の良いことばかりの燃料だ。

合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ
合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ    経済産業省資源エネルギー庁

もちろん、合成や運搬などにエネルギーが必要なので、厳密にはタダではないし、CO2ゼロは難しいけれど、それでも、地面から掘り出した石油を使うよりは環境によい。

そんな「eフューエル」合成燃料は、いつから使えるようになるのか?

政府の発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には、「合成燃料について、2050年に、ガソリン価格以下のコストが実現できるよう、既存技術の高効率化/低コスト化に加え、革新的新規技術/プロセスの開発を実施するとともに、商用化に向けた一貫製造プロセス確立のための応用研究を実施する」とある。

さらに経済産業省資源エネルギー庁のHPには「今後10年間で集中的に技術開発/実証をおこない、2030年までに高効率かつ大規模な製造技術を確立、2030年代に導入拡大/コスト低減をおこなって、2040年までに自立的な商用化を目指すという計画が立てられています」とのロードマップが提示されている。

うまくいけば10年後には技術が完成して販売をスタート。

ただし、価格はまだ高いため補助金などで補填、2040年には補助金なしのビジネスベースに乗り、2050年にはガソリンより安くなるという計画だ。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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