【チャーミングな元祖SUV】ジープCJ-7 トヨタ・ランドクルーザー FJ40 2台を乗り比べ 後編
公開 : 2021.07.13 20:45
リビルドでタイトなCJ-7の操縦性
大きなリビルドを経たクルマへ期待するように、真新しいジープCJ-7の操縦性の方がタイト。オーナーのジョーンズ以外で、レストア後に運転した人は限られるという。庭に放置されていたジープを、9年かけて見事に仕上げた。
骨太なシフトレバーは、サクサクと動く。クラッチがつながるポイントはかなり手前。ゲートの位置に気を使う、トヨタの長いシフトレバーとは違う。ただし、間違った段数を選んでもトルクが太いから大丈夫。
屋根もドアもないCJ-7の車内は、巻き込む風が生む共振音が大きい。英国郊外の流れの速い道より、北アメリカの山岳地帯を、夕日を浴びながら砂埃を上げて走る方が向いている。ゴロゴロと音を鳴らして。
FJ40には、片手でサスティナブルなスムージーを持って、海岸線を流せる親しみやすさはない。しかし、ウィンチェスター・オートバーン社によって大々的にレストアされたトヨタへ、不思議なことに強く惹かれる。
ドアヒンジはボディに露出し、リアにはスペアタイヤを積み、フロントはウインチを載せられるバンパーが守っている。丘でも谷でも、岩だらけの道でも構わない。どこを走るべきか、クルマが知っているようだ。
FJ40のすべてから、悪路への臨戦態勢を感じる。1979年のオフロード雑誌の調査では、ジープやインターナショナル・スカウト、フォード・ブロンコなどを抑えて、FJ40のオーナーが最も大地を冒険していたことが判明したという。
気取らない無骨さと実物大のオモチャ
その個性は今も変わらない。近年の評価はうなぎのぼりで、価格も上昇の一途。舗装路で運転すると、いろいろな我慢や妥協が強いられ、ドキドキする瞬間もあるけれど。
ランドクルーザーは、トヨタがアメリカで最も数多く販売したクルマ。1980年までに、世界中で100万台を売ったビッグセラーだった。ジープ並みの人気がなかったと考えるのは、勘違い。
ジープCJ-7もトヨタFJ40も、オフローダーの中では当時のランドマークといえるモデルだ。そもそも日常利用を前提にしたクルマではなかった。平和な大通りではなく、戦闘エリアを走る前提にあった。
数十年後にジープとランドクルーザーが対峙しているのは、過剰装備でマイルドになった、快適なSUVたち。レトロチックなデザインが盛り込まれた上級ブランドのSUVが、ハイストリートを走っている。
トヨタ・ランドクルーザー FJ40は、2021年に見るとチャーミング。気取らない無骨さがイイ。時代錯誤な装備や走りのクセも、許せるだろう。
ジープCJ-7は、ミニカーが実物大になったような雰囲気がある。使い慣れないオモチャほど、楽しいモノはなかったりもする。