新型トヨタGR86/スバルBRZ 本当にクルマ好きが楽しめる? 試乗

公開 : 2021.07.17 12:15  更新 : 2021.10.27 21:52

自然と上がるペース、優れた資質

新旧をさっと駆け足で乗り換えただけでは、コクピット環境の違いを見つけることはできない。

だがドライブフィールは別だ。

新型BRZはサーキットレベルの大入力に負けない体幹の持ち主であり、操り甲斐があると筆者。
新型BRZはサーキットレベルの大入力に負けない体幹の持ち主であり、操り甲斐があると筆者。    前田惠介

コースを半周する頃には新型BRZのリニアリティがよくわかった。ポテンシャルの大きさは、先代とは比べ物にならないほどだ。

2.4Lエンジンによる+28psには数値以上のパンチを感じたが、そもそも高回転型で4000rpm後半からの伸びがすばらしい。7500rpmのリミットに突き刺さるような勢いで回る。

アシは最初こそ柔らかく感じられたのだが、実際は両車に共通するミシュランPS4のキャラクターが立っていること、そしてボディがカチッとしてコシが強いことで、相対的にバネが柔らかく感じられたようだ。

ロードホールディングは非常にしなやかで、ペースを上げてもなかなか前輪のスリップアングルが増えて(アンダーステア方向になって)いかない。このためペースは自然と上がっていく。

ドライバーに十分なインフォメーションを与えることでハイペースへと導く。これはよくできたスポーツカーが必ず備えている性質だ。

トラコンを切りさらにスピードを高めると、スライドのコントロールは少し難しく感じられた。スロットルオンで滑り出しのタイミングは決められるのだが、スライドの収束が少し唐突で揺り戻しが残る。

とはいえ、新型BRZはサーキットレベルの大入力に負けない体幹の持ち主であり、操り甲斐がある。

ATモデルでもクッキリ、両者の違い

MTがかなり楽しめるクルマに仕上がっていることはある程度予測できたが、ATにはあまり期待していなかった。

ATモデルのみ両者ともアイサイトが標準装備されるらしいのだが、サーキット試乗には関係がない。

トヨタGR86のハブキャリア。GR86は鋳鉄、BRZはアルミ。
トヨタGR86のハブキャリア。GR86は鋳鉄、BRZはアルミ。    前田惠介

この手のATモデルはシフトダウンを命じてもなかなか首を縦に振らず、イライラさせられることが多いのだが、新型BRZのATはそんな期待をあっさりと裏切ってくれた。

電光石火とは言わないがシフトにダイレクト感があり、シフトダウン最中のバックトルクの変動も感じられなかった。

こうなると俄然「操ろう!」という気が沸き起こってくる。

今回の試乗で最も驚かされた瞬間は、BRZのATからGR86のATに乗り換えた時だった。

ピットアウトして1コーナーまでに感じたのは、ステアリングから伝わる角が取れた感触だった。

そしていくつかコーナーをやり過ごすとフロントのグリップ感覚が、BRZよりも感知しやすいこともわかってきた。

バネとダンパーの設定以外に、フロントのハブキャリアの材質(GR86は鋳鉄、BRZはアルミ)が違うという。

トヨタの開発陣に聞いてみると鉄の方が重いが、数値に表れない感触の良さがあり採用したという。

BRZで感じられたテールスライド収束の唐突な感じもGR86にはなかった。

一瞬でGR86に恋をして、次のMTモデルに期待が膨らんだ。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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