新型トヨタGR86/スバルBRZ 半常駐で2社開発 なぜ先代よりも深い関係
公開 : 2021.07.17 12:30 更新 : 2021.10.27 21:53
思い起こす スポーツカー復活目指した初代の開発
話が初代に触れたので、ここで時計の針を2012年に戻そう。
初代プロトタイプの報道陣向け試乗会は、スバルでもトヨタでもなく、ホンダの関連企業である栃木県のツインリングもてぎで開催された。
当時のツインリンクもてぎは、2011年3月11日の東日本大震災の影響を受け、オーバルコースでのレースを停止していた。
そうした中、コースのインフィールドの一部を利用して、「BRZ」プロトタイプを走らせた。
試乗したのは、量産までもう少し時間を要するような、少々粗削りな状態のプロトタイプで、フロア振動が大きく、またドライバー前方のファイアウォールを飛び越えて車内にはいりこむエンジン音の大きさに驚いた。
直観として「まるでレーシングマシンのようだ」と思った。
コース上で、かなり振り回して走ってみると「なんだ、これって本当にFRか?」と思えるほど前後バランスが四輪駆動車っぽく、エンジンパワーは「そこそこ」であることもあり、安定して思い切り楽しめる他に類のないタイプのスポーツカー、という感想を思った。
そんな試乗現場で、当時のスバル開発陣が「ある話」をしてくれた。
それは、商品の最終チェックのため豊田章男社長が試乗した際「86はもっと積極的にコーナーリングできるようなセッティングが欲しい」というリクエストがあったというのだ。
アルミと鋳鉄 両者がこだわった味付けの差
こうして、当初はBRZと86の走り味はかなりBRZ寄りの安定志向としていたが、急遽、足まわりのセッティングを「よりFRらしい方向」に見直したという。
ここで話を2021年に戻そう。
GR 86とBRZの開発担当者に「初代2モデルは、ハードウエアとしてなにが違うのか?」と再確認したところ、前後スプリングのバネレート、ショックアブソーバーの減衰力、そしてスタビライザーなどの違いを指摘した。
新型になり、スプリング、ショックアブソーバー、スタビによる仕様違いはもちろん、車体結合部分や、電動パワーステアリングのアシストトルク定数、さらにエンジン特性など幅広い領域に手を加えている。
実際に走らせると、BRZはよりパワフルになっても安定志向の乗り味とハンドリングは初代を継承していることがハッキリと分かる。
一方、GR 86はいわゆる「キビキビ感」がある走りだが、興味深いのはフロントタイヤからステアリングへのフィードバックがBRZとはかなり違う。
雨天での走行だったこともあり、路面からの微妙なフィードバックが必要とされた。
この差は、フロントハウジングのアルミ(BRZ)と鋳鉄(GR 86)の差だ。
GRの担当エンジニアたちとも意見交換し、彼らも「その差の大きさ」を指摘した。フロントハウジングの効果は絶大で、これがGRらしさを強めている。