【ベースはフォードF-550】プラサン・サンドキャットへ試乗 英国治安部隊の候補車両 前編
公開 : 2021.07.26 08:25
英国の治安部隊は、新しい装甲車を検討中とのこと。英国編集部はその候補になっている、イスラエル生まれの1台へ試乗しました。
シャシーはフォードF-550
道の王者だと主張するモデルは何台かある。だが、今の英国郊外の道でその頂点を探すなら、プラサン・サンドキャットの右に出るモデルはないだろう。
プラサン社のカタログには、比較的軽度の戦術用車両だと表現されている。だが路上で見るサンドキャットは、相当に物々しい。防弾ガラスと硬化鋼を用いたフラットなボディをまとい、表面にはパンクロッカーの革ジャンのようにスタッドが並ぶ。
車内から銃口を外に出せる小さな穴が空いていて、フロントマスクは肉食動物のようだ。SUV人気の今日でも、ここまでのモデルはない。いろいろな意味で注目を集めるだろう。
英国の治安部隊が採用している装甲車は、20年に及ぶ任務期間が終わりに近づき、次期車両の検討が始まっている。プラサン社は、その候補に加わるべくデモ車両を英国へ持ち込んだ。AUTOCARも、せっかくなので試乗させてもらう機会をいただいた。
車重7200kgもある、無骨なサンドキャットの内側にある基本骨格は、ヘビーデューティーなフォードF-550用シャシー。北米ではレッカー車などにも用いられている、大きなピックアップトラックだ。
そこへ装甲ボディを載せ、6名の特殊部隊を収容する空間を与えている。今回試乗したのは、最新のMk4サンドキャット。スーパーデューティー・シャーシを短縮し、ホイールベースは3429mmになっている。
装甲は12mmの硬化鋼とコンポジット素材
ボディはプラサン社がキットハルと呼ぶ、モジュラー構造のボルトオン・パネルが特長。ボディ形状をカスタマイズでき、最前線での任務中でもメンテナンスが容易だという。
サンドキャットの装甲の詳しい仕様は企業秘密だが、厚さ12mmの硬化鋼と、コンポジット素材による装甲で覆われているとのこと。重要な部分は、破片などを受け止める空気の層で分離された、第3のコンポジット層が守っている。
プラサン社によれば、もし同等の強度を硬化鋼のみで得るには、さらに4mm厚くする必要があると説明する。それだけ重くなってしまう。
試乗車のグレードはNATO標準でスタン+2と呼ばれるもので、手榴弾やAK47マシンガンの対戦車弾、ドラグノフ狙撃銃などによる攻撃に、あらゆる角度から耐えられるという。今回の試乗では、そんな危険な目には会わないはず。装甲の性能は確かめたくない。
高い位置の運転席へ腰を下ろす。まず驚いたのが、ドアを閉めるのにとても力がいること。厚い装甲が施されたドアは、相当に重い。しっかり閉まると金属的な響きが出る。車内の安心感を強めるように。
想像通り、前方視界は見下ろすような視点で良好。フロントガラスは厚さ101mmもある防弾仕様だが、景色に歪みはない。しかしサイドガラスは小さい。窓ガラスが大きいほど、重くなるためだ。