【ベースはフォードF-550】プラサン・サンドキャットへ試乗 英国治安部隊の候補車両 後編
公開 : 2021.07.26 19:05
英国の治安部隊は、新しい装甲車を検討中とのこと。英国編集部はその候補になっている、イスラエル生まれの1台へ試乗しました。
銃撃下でも安全な輸送が最大の使命
イスラエル生まれの装甲車、プラサン・サンドキャットの乗り心地は驚くほどに良い。路面の起伏を制圧させられる、7200kgの車重のおかげだ。
動的性能で重要な役割を果たすのが、大きなタイヤ。サンドキャットが履くのは、19.5インチのミシュランX マルチDと呼ばれるもの。サイズは285/70とワイドで肉厚。
ステアリングのレスポンスより高負荷に耐えられるように設計された、トラック用のヘビーデューティー・タイヤだ。さらに大径なタイヤも履けるが、試乗車のサイズの方が小回りは効くという。
タイヤは防弾仕様ではない。しかし、内側にハードラバーのインサートが入り、パンクした状態でも走行できる。たとえ銃撃を受けても、最大80km/hの速度で、80kmほど走れるという。
試乗車はオンロード用パターンのタイヤを履いていて、都市部など市街地での作戦に適した状態になっていた。そのかわりオフロード走行では、タイヤの細かい溝に粘土が詰まってしまう。
ぬかるんだ場所で前進を続けるには、フォード由来の四輪駆動システムに備わる、ローレンジを選ぶ必要がある。作戦の本番では止まるわけにはいかない。
完全武装した特殊警察部隊を、銃撃されている中でも安全に確実に輸送することが最大の使命。サンドキャットに与えられた、本来の役割を今回は試すことができないけれど。
機敏に動く無敵のトラック
少なくとも車内は広々。リアシートはコンパクトに折りたたみでき、フロア面積を最大限に利用できる。高さ方向も充分に広く、車内は前かがみの姿勢で歩き回れる。
武器の入ったラックや大きなシールド、ヘリコプターともつながる通信機器など、必要な装備を沢山搭載することも求められる。車内空間のゆとりは、大切な機能の1つになる。
もし英国仕様として課題をあげるなら、真後ろと斜め後方の視認性かもしれない。設計上のトレードオフがあるにしても、狭い窓は危険を確かめるうえでの妨げになると思う。
サンドキャットは、致命的な脅威にさらされている治安部隊に、安全で理解しやすい運転環境を提供してくれる。ダルく動く四輪駆動車ではなく、機敏に動く無敵のトラックだ。求められている目的には、見事に適合していると感じた。