【ベースはフォードF-550】プラサン・サンドキャットへ試乗 英国治安部隊の候補車両 後編
公開 : 2021.07.26 19:05
運命を変えたニューヨークの9.11
こんな装甲車両を一体誰が設計しているのだろう。プラサン社でデザイナーを務める1人が、ニル・カーン。1998年にコベントリー大学の車両デザインコースを卒業して3年後、彼はイスラエルへ移住した。
カーンは装甲車を手掛ける数少ない企業の1つ、プラサン社へ応募。最終的にデザイナーとして仕事をスタートさせたという。
彼は偶然にも、貿易センタービルが攻撃を受けた9.11の9日前に、ニューヨークへいた。その日をきっかけに、彼の運命を変えるプロジェクト、ファストバック・ハンビー(ハマー)の開発へ取り組むことになる。
ファストバックのボディ形状は、屋根に搭載したミサイルランチャー発射時の爆風を逃がすことが目的。プラサン社のコンポジット素材による装甲技術のおかげで、曲面的な形状が可能になったそうだ。
若い頃の夢はカーデザイナーだった
「デザイナーとしては、あまり思い通りとはいえませんでした。上司が、軍用トラックは大きく、正方形に近く、実用的な形状でなければならない、と話したことは忘れられません」。とカーンが当時を振り返る。
「しかし、こんな形状が可能なら画期的なものになるだろう、ということも上司は理解していました」。2006年にイラク戦争が激しくなると、プラサン社で装甲されたハンビーは、主力車両の1つになった。効果的に量産が可能だったためだ。
彼が描き出す装甲車両は、若い頃にAUTOCARを読みながらカーデザイナーになりたいと夢に描いた内容とはかけ離れているかもしれない。16歳の時に、ロータスのデザインスタジオを見学したことも、夢を大きく膨らませるのに一役買ったという。
「とても驚きました。大学ではカーデザインを勉強したいと、決心したんです」
サンドキャットのボディパネルの角度は、安全性の上でも意味があるものだという。コンポジット装甲素材のアドバンテージを生かしたデザインで、硬化鋼のみで製造するより25%も軽量に仕上がっている。
カーンは現在、プラサン社で4名のデザイナーを率いている。最新のデジタル設計技術を導入し、彼の仕事は多くの命を救うことに役立っている。