【320psのEA888に四輪駆動】フォルクスワーゲン・アルテオンR シューティングブレークへ試乗
公開 : 2021.08.01 08:25
印象的な見た目に上質な動的性能が組み合わされた、アルテオンのステーションワゴン。推奨できるモデルだと、英国編集部は評価します。
ゴルフRと同じエンジンに四輪駆動
ボディカラーが鮮やかなブルーでなくても、シャープさを増したルックスから、速いフォルクスワーゲンだということは感じ取れるだろう。ボディサイズはパサートよりひと回り大きい。
アルテオンのバリアントのことを、フォルクスワーゲンはシューティングブレークと呼ぶ。AUTOCARではすでに何度か、アルテオン・シューティングブレークの試乗レポートをお伝えしている。
しかし象徴的なブルーに塗られ、オプションの20インチ・アルミホイールを履く今回の1台は初めて。アルテオンで一番速いRだ。ちなみにホイールは、英国では19インチが標準となる。
ボディは大きいものの、内容はすでに見慣れたもの。チューニングを受けたEA888型と呼ばれる2.0L 4気筒ターボエンジンをフロントに搭載し、7速デュアルクラッチATを介して四輪を駆動する。
320psという最高出力から想像するとおり、基本的にはゴルフRと同じエンジンと駆動系が載っている。42.7kg-mの最大トルクのうち、後輪へ伝わるのは最高で50%。左右のリアタイヤ間では、その50%のすべてを片側のタイヤへ伝えることが可能だ。
コーナーリング中に、ラインを内側へ絞ることにも有効。よりダイナミックな体験を味わえるように仕立ててある。ほどほどに。
アルテオンRのインテリアは、カーボンモノコックが支えブルーのステッチが入る、滑りにくいスポーツシートが最大のハイライト。ダッシュボードの中央には、大きなインフォテイメント用モニターが鎮座している。
安全性重視の親しみやすい動的特性
ドライブモードを個別に調整すれば、ダンパーは15段階のレートから選べる。少し多すぎるかもしれない。
アルテオンのシューティングブレークは実用的。ドライビングポジションは素晴らしく、シートもステアリングホイールも、調整域が広い。人間工学も8代目ゴルフより優れている。だがフォルクスワーゲンなら、もう少し煮詰められるだろう。
ボディはやはり大きい。荷室空間は通常で565Lもある。リアシートの背もたれを倒せば、1600Lまで拡大できる。全高のあるパサートは650Lと1780Lで大きいが、実際は数字ほど明確な差は感じられない。
英国の一般道でも、アルテオンRの乗り心地は充分に許容範囲。他の市場では標準となる18インチならもっと優れるはずだが、英国では路面状態が悪い割に大径のものが好まれるようだ。長時間運転する前提なら、筆者なら1サイズ落とすと思う。
それでも、足さばきは充分に静か。快適で過ごしやすい。操作系の重み付けは適正で、反応も良い。落ち着きのある好ましい振る舞いは、操縦性にも反映している。
フォルクスワーゲンは、たとえ高速仕様のRでも、安全性重視の親しみやすい動的特性を与える傾向がある。コーナーへタックインし自由度の高さを感じる、最もスポーティなフォードやルノーとは一味違う。
ニュルブルクリンクのラップタイムを削るような、リアシートの省かれたゴルフでも同様。フォルクスワーゲンの技術者は、尖った性格を与えない。