【直感的で有機的】ノーブルM12 GTO-3へ再試乗 ミドシップの385ps 911とも比較 後編

公開 : 2021.08.05 19:05

ノーブルM12というスポーツカーをご存知でしょうか。誕生から20年という節目に、英国編集部が素晴らしいドライバーズカーへ再試乗しました。

ドライバーの概念を再構成する加速

text:Simon Hucknall(サイモン・ハックナル)
photo:Max Edleston(マックス・エドレストン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ノーブルM12 GTO-3のアイドリング時のエグゾーストノートは、フェラーリのものに近いとすら思える。目線を上げると、アルカンターラで覆われたロールケージが見える。極めて高剛性のシャシー構造の一部でもある。

ステアリングホイールはモモ社製。デザインは少しゲームチックだ。前方視界は、大きく弧を描くガラスのおかげでとても良い。

ダークブルーのノーブルM12 GTO-3と、ホワイトのポルシェ911カレラ
ダークブルーのノーブルM12 GTO-3と、ホワイトのポルシェ911カレラ

パワーステアリングは、古き良き油圧式。軽く回せて、情報量もふんだん。感触は、ロータス・エリーゼのよう。レシオはフェラーリと比べて穏やかだから、高速で流れる国道や郊外の道との相性も良い。

ノーブルの乗り心地は、舗装の傷んだ路面でも感心するほどしなやか。速いスポーツカーは硬いサスペンションが支えている、と考えている人にとっては目からウロコかもしれない。かつての記憶がよみがえってくる。

M12のアクセルペダルを踏み込んだ時の反応に対しては、ドライバーの概念を再構成する必要がある。まだ路面は濡れていて、慎重にならざるを得ない。ポルシェ911には搭載されている電子的なセーフティネットが、ノーブルには備わっていない。

911なら、右足を思いのままに動かすだけで、広大な自然に延びる道の一部になれる。しかしノーブルのパワーは、野蛮なほど。スポーツカーに乗り慣れていたとしても、M12 GTO-3とはすぐには打ち解けられないだろう。

巨大なトルクが生む鮮烈なドラマ

助手席に座る同僚は、サーキットでハイエンドのスーパーカーを乗り回せる人物。しかし、筆者が見通しの良い道でM12にムチを打つと、シートの中で固まり、ひたすらに驚いていた。彼は、今まで運転したクルマとは別次元だ、と言葉を漏らす。

3.0L V6ツインターボ・エンジンのトルクは巨大。車重1tをわずかに超えるM12 GTO-3に、中回転域での鮮烈なドラマを与えてくれる。

ノーブルM12 GTO-3(2002年/英国仕様)
ノーブルM12 GTO-3(2002年/英国仕様)

路面が乾燥していく中で、東のアッピンガムに向けてM12を走らせる。2021年でも、動的性能にまったく不満はない。より効果的に385psを路面へ展開する方法の、理解度が高まっていく。

路面に起伏やうねりがあっても、ノーブルの姿勢制御は常に安定している。フロントタイヤが、ワダチを追うようにワンダリングするのが少し厄介だ。

ブレーキは強力だが、オーバーアシストには感じられない。フロントのグリップは凄まじく、アンダーステアはほとんど顔を出さない。リアタイヤはタイトコーナーでグリップが抜けるが、漸進的に推移するから恐れる必要はない。

15年の時を経て、強烈だった記憶がすべてつぶさによみがえった。期待通りに。

ノーブルM12 GTO-3には、恐るべき力が備わっている。現代でも変わらず印象的だった。こんなクルマを生み出した、リー・ノーブルへ深く感謝したい。

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