【なぜスイスポ/GRヤリスは人気?】昔から変わらぬ 売れるスポーツモデルの秘訣とは

公開 : 2021.07.27 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

後席も使えることがニーズと合致?

コンパクトなスポーツモデルとしてGRヤリスも注目される。

価格は主力の1.6Lターボ+4WDのRZが396万円だから、かなりの高価格車だが、2021年1~6月の1か月平均登録台数は800台を少し超えた。

トヨタGRヤリス
トヨタGRヤリス

1.6Lターボの動力性能は、最高出力が272馬力(6500rpm)、最大トルクは37.7kg-m(3000-4600rpm)だから、自然吸気のノーマルエンジンに当てはめると3.5L相当だ。

この動力性能と4WDの搭載を考えると、価格が400万円近くてもユーザーとしては納得できる。

GRヤリスには1.5LのノーマルエンジンとCVT(無段変速AT)を搭載する2WDのRSも用意され、価格は265万円におさまる。

この販売比率もGRヤリス全体の約20%を占めるため、最廉価の不人気グレードではない。

GRヤリスは3ドアボディだが、居住性は5ドアと同等だから、後席は少し狭いが4名乗車も可能だ。一家に1台のクルマとして使えることも堅調に売られる理由だ。

このほか軽自動車のコペンとS660もコンパクトなスポーツカーとして注目されるが、2021年の届け出台数は、両車ともに1か月平均で260台前後にとどまった。

価格は200万円前後と安くても、2人乗りは売りにくい。

そのためかS660は、生産は2022年までおこなうものの受注を終了した。生産台数が少ないため、販売終了が発表されると、来年までの生産枠が埋まってしまった。

このほかシビックは、価格が300万円前後に達するが、販売は堅調だ。

今は新型への切り替わり時期だから登録が中断されているが、2020年には1か月平均で約600台、2019年は900台が登録された。

6速MTの比率は、タイプRを除いた1.5Lターボのハッチバックだけでも30%を超える。シビックも6速MT比率が高い。

売れる秘訣は? 素のグレードの走りもポイント

前述のとおり販売の好調なスポーツモデルには一定の条件がある。

まずボディタイプは、2シーターや後席が極端に狭いスポーツカーでは売りにくい。4名で乗車できることが条件だ。

ホンダS660
ホンダS660

ただしセダンには高価格車が多く、保守的な印象も強いために売れ行きが低迷しやすい。ハッチバックが1番だ。

そこでスイフトスポーツを筆頭に、GRヤリス、シビックなどが人気を集めている。

スポーツモデルの人気車では、MT比率が高いことも特徴で、スイフトスポーツは前述のとおり60%、シビックも30%少々を占める。GRヤリスの1.6Lターボ+4WDは6速MTのみだ。

このような販売動向があるため、ノーマルタイプのヤリス、カローラ・スポーツ、マツダ3なども6速MTを用意する。

価格の求めやすい車種を中心に、ハッチバックにMTを選べるスポーツモデルを設定するとユーザーの共感を得やすい。

今後はノート・オーラにも、MTはないがスポーツモデルの「ニスモ」が用意される。

ただしすべてのハッチバックにスポーツモデルを設定することは難しい。

スポーツモデルに発展させるには、ベースのノーマルグレードにも、優れた走りの素性が必要になるからだ。

スイフトスポーツも、ベースのスイフトが走りの優れたコンパクトカーだからこそ、1.4Lターボエンジンやモンロー製の足まわりが良い効果を生み出した。

したがってコンパクトカーとその発展型のスポーツモデルをセットにして開発すると、スイフトのようにベース車の走りも向上して相乗効果を高められる。

素性の優れたコンパクトカーが上質なスポーツモデルを生み出す鉄則は、1975年に発売された初代フォルクスワーゲンゴルフGTDの時代から変わっていないのだ。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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