【最新は最良か】ブリヂストンの新ブリザック 氷上で知るVRX3の本領

公開 : 2021.07.27 11:45  更新 : 2021.10.18 23:45

アンダーが出た その後に感心

さらに感じられるのは、アクセルを踏み込んだ最初のひと転がり、ひと蹴りがまるで別物。

ま、FWDなのでひと掻きになるが、ゼロスタート加速で路面をガッと噛んで駆動するため、即14km/hに達して自らアンダーステアを誘発してしまう。それほど路面を確実に捕えている。

検証当日のコンディションは、室温10℃、路面(氷上)温度マイナス2℃。新・旧ブリザックの定常円旋回とブレーキングを、まったく同じ条件下で比べることができた。
検証当日のコンディションは、室温10℃、路面(氷上)温度マイナス2℃。新・旧ブリザックの定常円旋回とブレーキングを、まったく同じ条件下で比べることができた。    宮澤佳久

驚きは、グリップを失いアンダーステアに転じた後の動きにある。

VRX2はアクセル操作で速度を落とし、元の旋回軌道に戻そうとするも、戻り難い。コーナリング中に“グリップを失ったタイヤ”を元の軌道に戻すことは、乾燥路面でも難しいものだ。

ところがVRX3、氷上の円旋回で14km/hを超えて、スススッとノーズが外にはらむ姿勢を感じ、同時にアクセルをわずかに戻すと、速度が落ちるとともに元の旋回軌道に戻るではないか! これはタイヤの特性を知るヒトほど、信じられないと思うだろうレベルである。

円旋回からスケートリンクの外壁に沿って加速し、ブレーキング。過去にVRX2を愛車に装着していたので、降雪地域でブレーキングした際の頼もしい減速Gや、ステア操作時の舵の効き/手応え感もハッキリと体感し脳裏に刻まれているが、今日VRX3と比較するVRX2は、何とも心もとない。

ブレーキングした際のABSの介入の早さ、減速感の乏しさは、VRX3なら20%も上回った氷上ブレーキング性能を体感できるから、尚更である。

氷上は、最新の発泡ゴム技術で

VRX3のブレーキングはまず全体的にしっとりと路面に喰い付いている感が強い。ABSの介入も細かく制御されるので、障害物を想定してステア操作しても正確に舵が効く。

北海道の市街地の交差点、磨かれたミラーバーンでの加速はともかく、停止する際にツルッと滑り、グリップを失いABSが作動したまま前車にみるみる迫る! あの恐怖を経験すると、この減速感と滑りながらも効くステア操作はおおいに救いになる。

毛細管現象を利用し、“水を吸い上げる”発想を採り入れた発泡ゴムが、VRX3の見どころ。氷上ブレーキングはその本領である。別の写真では、VRX2を履いた車両が制動時に赤いコーンを超えそうになるのを確認できる。
毛細管現象を利用し、“水を吸い上げる”発想を採り入れた発泡ゴムが、VRX3の見どころ。氷上ブレーキングはその本領である。別の写真では、VRX2を履いた車両が制動時に赤いコーンを超えそうになるのを確認できる。    宮澤佳久

非降雪地域の者にはわからない雪上・氷上でのクルマの動きと止まらない怖さ。

とくに氷上での性能向上が期待されるスタッドレスだが、VRX3に投入されたブリザックならではの発砲ゴムの進化(フレキシブル発泡ゴム)は、吸水力の改善と、経年劣化によるタイヤが硬くなる事の抑制、柔らかさの進歩。

さらにトレッドパターンの進化には、徐水のレベルアップと、接地圧の最適化を含む摩耗の抑制がある。これらによりなんと2世代、約8年分の進化を遂げたと自負する新たなブリザックが完成した。

冬本番が待ち遠しいと思うのは、タイヤ試乗レポーターの職業病!? 最新の技術で造られたスタッドレスタイヤこそ、最良のスタッドレスだと筆者は思う。

記事に関わった人々

  • 宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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