【忘れられない味わい】アストン マーティンV8/ヴァンテージ 英国版クラシック・ガイド 前編
公開 : 2021.08.01 07:05
1970年代から1980年代に製造された、高性能4シーターのV8と初代ヴァンテージ。デビッド・ブラウン時代の流れをくむアストンを、英国編集部がご紹介します。
経営難に陥った1970年代のアストン
優れた技術者、タデック・マレックが開発したオールアルミのクワッドカム、燃料インジェクションV8エンジンを、ウィリアム・タウンズがデザインしたボディへ搭載した初代DBS。素晴らしいスポーツクーペだったが、いささかコストがかかりすぎた。
1972年、デビッド・ブラウンはやむなくアストン マーティンを売却。カンパニー・デベロップメンツが新オーナーとなると、DBSはタウンズの手によりフェイスリフトを受ける。来たる1980年代に相応しい、アストン マーティンV8として発売された。
遮音性と断熱性を高め、電子点火システムを採用。エアコンが標準装備となり、レザー巻きだったステアリングホイールは、ウッドリムに置き換えられた。
しかしジャガーと同様に、アストン マーティンも北米の排出ガス規制をインジェクションではクリアできなかった。そこでウェーバー社製の4キャブレターが組まれ、ボンネットには大きなバルジが追加される。
アストン マーティンは再び資金繰りに行き詰まり、1974年に管財人の管理下に置かれる。アラン・カーティスをはじめとする投資家や、裕福なオーナーの力添えで復活すると、V8に高性能オプションを設定。1977年にはV8ヴァンテージも登場した。
1981年、事業家のヴィクター・ガーントレットがアストン マーティンの経営権を獲得。常時安定ではなかったもののブランドを維持し、フォードへバトンをつないだ。
維持費を準備して専門ガレージへ任せたい
そんな荒波を乗り越えてきたアストン マーティンV8。大きく重たいモデルだが、ハンドリングは繊細で、実際に運転してみるとひと回り小さく感じる。広々というわけではないものの、リアシートに大人も座れる4シーターだ。
動的性能にも不足はなく、特にヴァンテージは群を抜いている。燃費には目を背けたくなるかもしれないが、経済性でアストン マーティンを選ぶドライバーはいないだろう。
技術に長けたオーナーなら、自身でアストン マーティンV8のメンテナンスも可能かもしれない。しかし部品は高価で、作業時間も充分確保しなければならない。
自分で手に負えないなら、事前に不足ない維持費を用意し、面倒を見てくれる専門ガレージを見つけておきたい。詳しくないメカニックより短時間に、適切な費用で手入れしてくれる。
クーペボディのV8をもとに、バンハム社の手でコンバーチブルへ改造された例もある。コンバージョンの品質は高く、ハードトップのV8と変わらない価値がある。それでも、アストン マーティン自ら手がけたヴォランテほどではない。
見た目の状態は良くても、殆ど乗られて来なかったようなクルマの場合、道を快適に走れるように戻すのに10万ポンド(1540万円)は見ておきたい。完全なリビルドの場合、標準のV8でも20万ポンド(3080万円)くらいは必要になるだろう。