【忘れられない味わい】アストン マーティンV8/ヴァンテージ 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2021.08.01 17:45

1970年代から1980年代に製造された、高性能4シーターのV8と初代ヴァンテージ。デビッド・ブラウン時代の流れをくむアストンを、英国編集部がご紹介します。

メンテ不足や乗らないことが不具合のもと

text:Malcolm Mckay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1970年代から1980年代のアストン マーティンV8やヴァンテージを購入する場合、必ず試乗は済ませたい。エンジンやトランスミッション、サスペンションなどから不自然なノイズがないか、充分聞き耳を立てたいところ。

本来のパフォーマンスを発揮できないなら、キャブレターの不調や電子点火システムの不具合かもしれない。エンジン内部の摩耗が原因なら、相当なリビルド費用を見込む必要がある。

アストン マーティンV8/ヴァンテージ(1972〜1989年/英国仕様)
アストン マーティンV8/ヴァンテージ(1972〜1989年/英国仕様)

適切に手入れされていて、適度に乗られているアストン マーティンなら、耐久性はそこまで悪くない。リビルドまで24万kmくらい走れるという。多くの不具合は、殆ど乗らなかったり、メンテナンス不足が原因のことが多い。

ZF社製の5速ATを積んだV8もあるが、もともと変速は滑らかではない。MTのシンクロメッシュは、新車時でも乗り始めてすぐに壊れたというケースもあったようだ。

試乗ではトランスミッションのベアリングからの異音や、シンクロメッシュの調子を確かめたい。トップギアでアクセルペダルを踏み込んで、クラッチが滑らないかもチェックポイント。交換は安く済まない。

ブレーキはツインサーボ付きのベンチレーテッドディスクで、効きは見事。乗らないでいるとサーボが不調に陥る。数年ごとに2000ポンド(30万円)かけて交換、という羽目にもなりかねない。

パワーステアリングは重み付けが適正で、フィーリングが良く正確。もし感触が悪いなら、ジョイントやブッシュ、ベアリングなどの交換サインだ。

不具合を起こしやすいポイント

エンジン

クワッドカムのV8エンジンは素晴らしい仕上がりで、組んだ職人の名前も記されている。充分なメンテナンスは不可欠だから、過去の履歴を確かめる。リビルドにはかなりの費用が必要になる。

タイミングチェーンは、劣化すると伸びてガタガタ振動する。ウォーターポンプも劣化で音を立てる。アルミ製のエンジンブロックは後ろ側のウェットライナー付近が腐食し、シールが痛みがち。エンジンオイルとクーラントが混ざってしまう。

ヘッドガスケットも、経年劣化やオーバーヒートで交換が必要なことがある。クランクは、初期のV8で不具合が出やすい。ラジエターの腐食も確かめたい部分の1つ。

ボディ

ボディはアルミニウム製で、鉄と接触する部分が腐食しやすい。ボディ下部のエッジや給油口付近を確かめたい。フロントタイヤ後ろ付近の腐食は一般的。

サイドシルやドア、アウトリガー、A・Bピラーの付け根、荷室のフロア、ドアの内側なども確認ポイント。ボディシェルを確認する場合、サイドシルカバーを外すと良い。

ブレーキと燃料の配管はアウトリガーを貫通している。溶接作業などでは、事前に取り外す必要がある。

トランスミッション

MTのリビルドは高い。ベアリングの異音やクラッチの状態は確かめたい。

クライスラー社製のATは、さほど不具合が出にくい。キックダウンや変速の調子を確かめ、フルードが黒く焦げていないかチェックしたい。

インテリア

ハンドメイドのウッドやレザーは復元が可能。初期のプラスティック成形部品やメーター、スイッチ類は部品が出てきにくい。

初期のV8の場合はウッドが使われておらず、レストアは比較的安価。年式によってメーターが変更されている。

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