【詳細データテスト】ロータス・エキシージ 柔軟な加速 魔法のようなハンドリング 生産終了が残念
公開 : 2021.07.31 20:25 更新 : 2021.08.02 04:36
操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
次世代ロータスのエミーラには、ついにエキシージが最後まで採用しなかったテクノロジーをふたつ導入する。
まずはパワーステアリングだ。エキシージのスポーツ390の車両重量は公称1138kg、実測1218kgで、ロータスがノンアシストでOKだと考える限界にほぼ達している。豪華装備の増えるエミーラはさらに重くなるので、電動油圧アシストが与えられるのだ。
もうひとつのアイテムがLSDである。コーナー進入時にステアリングの初期レスポンスを損ねるとして、ロータスはエリーゼとエキシージへの装着を敬遠してきた。
今後はともかく、今回のエキシージのハンドリングは、まさしくこれまでどおりの典型的なものだ。この上なく精確で、小径リムのステアリングで思い通りのラインを通していくことができる。また、コーナーへの進入で、まずは前輪が路面に食いつき、それに後輪がついてくる統一感がある。
ステアリングの一定したレシオと独特の重さゆえに、A110のように軽いタッチで動かせはしないし、入力は慎重さを求められる。だが、自分をなだめてある種のリズムを見出せば、エキシージはすばらしく落ち着きがありながらも俊敏さをみせ、世界でもトップレベルのフィードバックが得られる。そして注目すべきは、荒れた路面でもステアリングの破綻がみられないことだ。
強引なステアリング操作が求められることもあるが、それはよほど道が傷んでいる場合に限られる。しかも、その瞬間がやってきそうだということは確実に知ることができ、準備できるのだ。アシストなしのステアリングと、限定的なサスペンションのトラベルがもたらす弊害は、ほとんどないといっていい。
ハードに走らせると、穏やかなハンドリングに反してフィードバックは高まる。タイヤはミシュランのラインナップのなかでも比較的普通なパイロットスポーツ4だが、フロントのグリップはふんだんにある。しかし、低速と高速のコーナリングでは、V6ユニットかコンディションがシャシーに勝っていることを、軽いアンダーステアが伝えてくる。
繊細にスロットルを戻せば、鼻先は走行ラインに戻り、逆にパワーをかければ大きく流れる。すべては緻密で、魅力的で、誇張になるかもしれないが魔法のようだと表現したくなる。2021年現在においても、この感触と精確さでエキシージを上回るクルマは見つからない。