【始まりのミドシップ】フェラーリ365 GT4 BBとマセラティ・ボーラ ミウラへ対抗 中編

公開 : 2021.08.14 17:45  更新 : 2022.08.08 07:26

1971年に誕生した、フェラーリ365 GT4 BBとマセラティ・ボーラ。ミウラに対峙したミドシップ・スーパーカー2台を、英国編集部が振り返ります。

ジウジアーロのボディに4.7L V型8気筒

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
マセラティ・ボーラに積まれた4.7L V型8気筒エンジンは、42DCNF型のウェーバー・キャブレターを4基搭載し、圧縮比は8.5:1。1973年以降は、4.9Lへ排気量が拡大されている。

ZF社製のトランスアクスルが組み合わされ、5速で273km/hの最高速度に届くとされた。だが、新車時に自動車メディアが実施したテストでは、良くても257km/hが実際だったようだ。

マセラティ・ボーラ(1973年/英国仕様)
マセラティ・ボーラ(1973年/英国仕様)

サスペンションは、前後ともにマセラティの公道用モデルとしては初採用となる、ダブルウイッシュボーン式。ラック・アンド・ピニオン式のステアリングラックも、初めてだった。

1960年代に作られていたマセラティのフロントエンジン・モデルはすべて、3500GTからの直系。1958年以降のマセラティとして、まったく新しいコンセプトが盛り込まれていたといっていい。

ステンレス製のルーフが与えられたスタイリングは、ジョルジェット・ジウジアーロが立ち上げたイタルデザイン社として、最初期のプロジェクトの1つ。カロッツエリア・ギア時代にジウジアーロはマセラティ・ギブリを手掛けており、信頼関係は築いていた。

エンジニアのアルフィエーリが考案した構造は、フェラーリ365 GT4 BBに近いものだった。スチール製のモノコックタブを車両中央に置き、角パイプを用いたトライアングル構造が前後に伸びている。

そこへコイルスプリングとダンパーで構成されたサスペンションや、サブフレームが組み付けられている。ジウジアーロのボディもスチール製だ。

ボーラの現存は英国で11台のみ

今回ご登場願った2台は、ともに珍しい右ハンドル車。ロッソ・コルドバと呼ばれる深めのレッドに塗られた365 GT4 BBは、1975年のロンドン・モーターショーに出展された、そのクルマ。

フェラーリの輸入を手掛ける、マラネロ・コンセッショネア社が新車として英国で販売した、58台の1台になる。1975年、述べ119台の365 GT4 BBが製造された。1970年代、12気筒エンジンのフェラリーは今より遥かに希少だった。

フェラーリ365 GT4 BBとマセラティ・ボーラ
フェラーリ365 GT4 BBとマセラティ・ボーラ

一方のボーラは1973年製。365 GT4 BBよりさらに少ない、正規輸入された44台のうちの1台だ。マセラティUKがヒストリックカーとして保有していた過去を持ち、VNP 703Lのナンバーを付けたクルマは英国では最も有名なボーラといえる。

マセラティ・ギブリより全長は短いが、車重は1550kg近くあり、ほぼ同等。とても魅惑的なボディラインながら、フェラーリが放つ強いエレガントさまでは得られていない。

365 GT4 BBがもう少し大きく妖艶なら、モダンなスーパーカーにも負けない存在感を漂わせそうだ。だが、英国の路上を今も走っているボーラは11台だと考えられ、希少さでは勝っている。

2台ともに、タイヤはミシュランのXWXを履く。サイズは215/70と、ドーナツのように丸く肉厚。1970年代の高性能モデルには、ベストチョイスの銘柄だった。

フェラーリのタイヤが4本ともに同じサイズだったのは、この365 GT4 BBが最後。後期のBBでは、リアが太くなっている。5スポークのセンターロック・ホイールも、ボーラが装備するメルセデス・ベンツ風の4ボルト・ホイールより魅力的に見える。

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