【ドイツ訪問】新型メルセデス・ベンツCクラスPHEV「C 300e」 日本人ジャーナリスト試乗

公開 : 2021.07.29 11:20  更新 : 2021.10.09 23:05

210kmのルートでC 300eに試乗

今回はスイス・チューリッヒから、ドイツ・イメンディンゲンに2018年9月に開設された、メルセデス・ベンツの最新開発拠点であるTTC(テスト・テクノロジー・センター)までの約110kmと、TTCからチューリッヒ空港までの約100kmの、合計でおよそ210kmのルートを試乗した。

通常のマイルドハイブリッドモデルとC 300eの見た目の違いは、ヘッドライト内部にブルーLEDのアクセントが備わる点と、車両左側後部に充電口を装備する事くらい。インテリアも基本的に他の仕様と変わらないが、ラゲッジスペースの形状は異なる。

通常のマイルドハイブリッドモデルとC 300eの見た目の違いは軽微。
通常のマイルドハイブリッドモデルとC 300eの見た目の違いは軽微。    メルセデス・ベンツ

C 300eはラゲッジ下部に大容量バッテリーを搭載するため、フロアが持ち上げられ、容量が通常445Lのところ315Lと、140Lも小さくなっている。

ただし、フロア高が開口部の下端とほぼ同じになっているので、使い勝手は悪くなさそうだ。

なおステーションワゴンのラゲッジ容量は、通常490LのところPHEVは360Lとなる。

スタートボタンを押して、シフトセレクターをDレンジに入れ、電動パーキングブレーキを解除して試乗スタート。

始動時はEVモードがデフォルトなので、エンジンはかからない。それでもチューリッヒ湖畔の勾配のきつい登り坂をグイグイと力強く登ってゆく。

EV走行時にはパドルスイッチで回生力の強さをD+、D、D−の3段階で調整できる。

D+ではほぼワンペダルドライブも可能だが、慣れるまではギクシャクした運転になりがち。

下り坂やワインディングロードを積極的に走る時などには強めに、低速時には軽めにするなど、ドライバーの好みや走行環境に合わせて使い分けるのが良さそうだ。

常用域ではほとんどエンジンかからず

電気モーターだけで44.9kg-mもの大トルクを発生させるので、常用域ではほとんどエンジンはかからない。

ハイブリッドモードでもバッテリー残量が十分にある時はEV走行となり、直4ターボはアウトバーンで追い越し加速をするときなどに一瞬始動する程度だ。

新型メルセデス・ベンツCクラス「C 300e」の試乗において常用域ではほとんどエンジンはかからない(筆者)
新型メルセデス・ベンツCクラス「C 300e」の試乗において常用域ではほとんどエンジンはかからない(筆者)    メルセデス・ベンツ

ただし、スポーツモードを選択すると、エンジンは常時回り、勇ましいエグゾーストノートとともに、なかなかダイナミックな走りを披露する。

ちなみにエンジンが回っている間、パドルスイッチで変速が可能になる。

事前にアナウンスされた情報では、EVモードにおける最高速度は140km/hとされていたが、今回ドイツのアウトバーンの速度無制限区間で試してみたところ、メーター表示で151km/hまで電気モーターのみで加速した。

そしてEV航続距離は、掛け値無しに100km以上である。もはやICEは追い越し加速時のアシストと、バッテリーが底を突いたときのための保険といった感じである。

ハンドリングは、大容量バッテリーの搭載で車両重量が大きく増している事を考えれば、十二分に俊敏で素直だ。直進安定性も良い。前後重量配分も悪くなさそうである。

225/45R18サイズの「MO(メルセデス・オリジナル)」と表記のある、グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック5を履いた足回りは、やや硬質な感触だが、乗り心地も特に文句は無い。

だがマイルドハイブリッドモデルにまだ乗っていないので、明言はできないのだが、PHEVとはいえ、新型Sクラスと同じMRA IIプラットフォームを採用した新型Cクラスの、本来の快適性がこの程度とは到底思えない。

市場投入までには、さらに上質な乗り味となる事を期待したいところである。

過去にも先代Sクラスや改良前のEクラスのPHEVモデルは、ラインナップ中ベストと言ってもいいほど非常に上質な乗り味を実現していたので、決して不可能ではないはずだ。

そうなれば、将来的なBEVの顧客もより多く掴まえられるかもしれない。

とはいえ試乗していてドライビングが楽しい、気持ち良いと感じたのは、わたしが保守的なのかもしれないが、やはりスポーツモードで迫力あるエンジンサウンドを聴きながらワインディングロードを走っていたときだった。

メルセデスにはマイルドハイブリッドでもPHEVでも構わないので、ICEを搭載したモデルを「市場環境が許すかぎり」作り続けてくれることを願う。

記事に関わった人々

  • 竹花寿実

    Toshimi Takehana

    1973年生まれ。自動車専門メディアの編集者やライターを経て、2010年春に渡独。現地でドイツ車とドイツの自動車社会を中心に取材、日本/中国/ドイツ語圏のメディアに寄稿。2018年夏に帰国、現在は東京を拠点に新型車や自動車業界、モビリティ全般について独自の視点で発信中。海外モーターショーの取材経験も豊富な国際派モータージャーナリスト。

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