【純EVの教科書】メルセデス・ベンツEQS 580 4マティックへ試乗 航続距離675km 前編
公開 : 2021.08.14 08:25 更新 : 2022.08.08 07:26
パワフルでラグジュアリーな純EVのEQS。広々とした車内が生む比類ない洗練性と快適性は、真のメルセデス・ベンツだと英国編集部は評価します。
メルセデス・ベンツにとって決定的な瞬間
メルセデス・ベンツのオーラ・ケレニウスCEOは、2021年4月のEQS発表時に、世界最古の自動車メーカーにとって決定的な瞬間だ、と表現した。誇張気味の表現は、近年の挨拶では珍しくない。しかしEQSの登場に限っては、異論を挟む余地はないだろう。
すでにメルセデス・ベンツは、クロスオーバーのEQAとEQB、EQCや、ミニバンのEQVといった純EVを発売している。しかしEQSは、それら内燃エンジンモデルからの派生版とは異なり、ブランド初となる純EV専用のプラットフォームを採用している。
最長780kmを走れる高密度バッテリーを搭載し、最新の上級モデルに見られるような、先進的なインテリアが設えられてもいる。従来のSクラスの購買層に対し、電気という選択肢を与えるため誕生した、豪奢なリフトバック・ボディの4ドアサルーンだ。
EQSは、増加の一途にあるメルセデス・ベンツの純EVモデルのトップに位置する。ブランドの技術力を示す、ショーケース的な意味合いもあるはず。
今後控えているサルーンのEQEのほか、クロスオーバーのEQE SUVやEQS SUVへの搭載も想定される、数多くの先進テクノロジーが満載だ。これらは、2023年末に登場を控えている。
メルセデス・ベンツは、ポルシェ・タイカンやテスラ・モデルS、ニオ ET7などをEQSのライバルとはみなしていない。間もなく登場するであろう、アウディの通称ランドジェットや、BMW i7といったドイツ勢を意識している。
Sクラス級のサイズに弧を描くルーフ
ただしアウディやBMWからは、しばらく純EVの高級サルーンは発売予定がない。アウディA8 60 TFSIeやBMW 745e、あるいはメルセデス・ベンツS580eといった、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)としのぎを削ることになる。
スタイリングは、従来のメルセデス・ベンツから大きな飛躍を遂げている。2019年に発表された、EQSビジョン・コンセプトへ与えられたキャビン・フォワードのフォルムと、デザインエレメントが与えられた。
明白な部分といえば、フロントグリルにかわって前面を埋める、光沢のあるブラックパネル。その左右には、鋭角なヘッドライトが伸びている。上部にはスリムなLEDデイタイムライトも埋められた。
フロントガラスは大きく寝かされ、メルセデス・ベンツがワン・ボウと呼ぶ、大きく弧を描くルーフラインへ滑らかにつながる。そのまま緩やかに降下し、テールゲートへと導かれる。
ドアはフレームレス。Sクラスのオプションにも設定される、格納式のフラッシュ・ドアハンドルが標準で備わる。ホイールアーチは大きい。19インチから21インチまでの大径アルミホイールを、難なく収めることができる。
EQSのボディサイズは、全長5216mm、全幅1926mm、全高1512mm。最新のSクラス比で、37mm長く、28mm狭く、9mm高い。ホイールベース長は3210mmで、Sクラスより106mm長い。
オーバーハングが短く、車内空間は大きく取られている。大柄なボディでありながら、空気抵抗を示すCd値は0.20とかなり低い。Sクラスより空力特性に優れると、メルセデス・ベンツは主張する。