【陸海を制する】スズキ 創立100周年記念イベント 小さな乗り物に詰まった魅力
公開 : 2021.08.07 06:05
衝撃を受けたレーサーレプリカ
取材初日の夕方、丘の上でウィズキッド、イグニス、スイフト・スポーツで遊んでいたときは太陽が輝いていた。雨が降りそうな2日目の朝、取材陣はスズキのバイクで出かけようとしている。
スズキはオートバイの世界では、ホンダ、ヤマハ、カワサキの影に隠れがちだったが、ライバルと同等、あるいはそれ以上の性能を持つバイクを生産してきた。
ホンダは1969年に画期的なCB750を発売し、カワサキはその数年後に900ccのZ1を発売した。スズキのビッグバイクはGT750で、「フライング・ケトル」として知られる水冷3気筒2サイクルを積んでいた。
1976年、スズキはケトルの代わりに4気筒4ストロークの750ccを採用し、GS750と名付けて発売した。このエンジンは滑らかで甘美で、ハンドリングもライバルよりはるかに優れていた。
1985年の春、ロンドンのマーブルアーチをMZ250でふらふらしながら配達に向かっていたわたしは、レースバイクのようなマシンに目を奪われた。スズキのGSX-R750を初めて見たときのことだ。これほどの革新的で、これほどの評判とカルト的人気を得たスズキ車は他にない。「ジクサー」は、レーサーレプリカのムーブメントを起こしたバイクである。
スズキは、36年前にわたしがロンドンで見たのと同じ青と白のGSX-R750をイベントに持ってきた。生産初期のFモデルだ。
自動車メーカーでは数年に一度、マイナーチェンジを行うのが一般的だが、バイクメーカーでは毎年、大幅な変更が行われる。例えば、1986年のGSX-R750 Gでは、スイングアームを1インチ(25mm)長くしてハンドリングを向上させている。
ライバルを捕食する猛禽
スズキはGSX-R750で油冷式を採用し、冷却水、ポンプ、ラジエター分の重量を削減した。このバイクは軽く、とてもコンパクトに感じられる。
記者と一緒に走るのは、元モーターサイクルレーサーのイアン・ウィルソンだ。ウィルソンは2021年式のハヤブサに乗っている。ハヤブサは、スズキが起こしたもう1つの革命だ。
ホンダは1996年にCBR1100XXスーパーブラックバードというバイクを発表したが、これは最高速度が290km/h近いスーパースポーツツアラーだった。ハヤブサの車名の由来となった鳥の隼は、非常に速く飛ぶ(急降下で300km/h以上)だけでなく、ブラックバードを捕食する猛禽類でもある。
クルマと同様に、バイクの世界でも馬力と性能が追求されているが、複雑になりすぎているのもまた事実だ。最新のハヤブサは、トラクションコントロールやウイリー防止のモードなど、驚くほどの機能を備えており、1速で全国の制限速度を突破してしまう。美しい技術の結晶であり、速く走るための努力は惜しまないが、不条理なマシンである。
しかし、このGSX-R750は、実力と性能のバランスが取れていて、走り甲斐がある。わたしは古いバイクがあまり好きではなかったが、この1985年製のマシンには感動した。