【陸海を制する】スズキ 創立100周年記念イベント 小さな乗り物に詰まった魅力
公開 : 2021.08.07 06:05
軽くてシンプルな乗り物の魅力
イベント3日目。取材陣は、ラリーチームがテストに使用するオフロード施設、ウォルターズ・アリーナに集合し、この2、3日で遊んだスズキ車の集合写真を撮る。
カメラマンのレイシーがライトの配置やマシンの移動をしている間、記者は別のクルマでドライブに出かけた。
まさかこの小さな4WD車がカルト的な人気車になるとは、誰が想像できただろうか。スズキがジムニーを発売したとき、東京の販売店には膨大な行列ができたという。英国でジムニーの中古車につけられている価格を見てみると、新車を超えるものもある。
残念なことに、ジムニーはEU(欧州連合条約)の排ガス規制に対応できないエンジンを搭載していた。そこで、英国では後席を外して商用車として販売することになった。
小さくて軽くてシンプルな乗り物は、オフロードでもオンロードでも同じように使える。ジムニーで土手を登ったり、水たまりをはねたりして遊ぶ10分は、新型ディフェンダーで遊ぶ1時間と同等の価値がある。
わたしはスズキのクルマを所有したことはないが、バイクは少なくとも4台所有している。初めてのバイクはTS125というオフ車で、17歳の誕生日の午前5時半に公道に出た。そして3日後にクラッシュした。
スズキがシンプルさ、軽さ、魅力的なデザインという原則を貫けば、次の100年はさらに実りあるものになるだろう。スズキのような哲学を持った企業であれば、EVの時代になっても、重くてオーバーパワーな乗り物を作るという誘惑に打ち勝つことができるだろう。
艶めく船外機の世界
わたしは生涯にわたって船外機を愛し続けてきた。フェチと同じで、説明するのは難しい。見た目がかっこいいし、コンパクトなカバーの中に多くのハードウェアが隠されているのが好きなのだ。
ゴードン・マレーも同じく船外機の愛好家で、わたしとは気が合う。わたしがホテルのフロントに置かれたスズキの船外機に30分も見入ってしまったのも、彼なら理解してくれるだろう。それは4.4LのV6 4ストロークという巨大なものだ。
船外機の世界では、エンジンに堂々と馬力の数値を表示している。このスズキ製エンジンは350。それも、3万900ポンド(約470万円)と、スズキが作っているクルマよりも高価だ。
バリー・シーンのXR14
1970年代には「ブランド・アンバサダー」という言葉は存在しなかったが、バリー・シーン以上のアンバサダーがいただろうか?
ロードレーサーである彼のマーケティング力は、わたしにコロンを買わせるほどではなかった(シーンはBrut 33というコロンの広告に出ていた)が、スズキのバイクを所有したいと思わせるには十分だった。
ホテルのフロントには、彼が昔乗っていたレース用のバイクが、前述の船外機と並んで置いてある。XR14だった。RG500のワークスマシンで、シーンが最初にチャンピオンに輝いた1976年のものだ。
イアン・ウィルソンはこう言っている。
「ひどい。9000回転以下ではほとんどパワーが出ないし、ブレーキはパッドが木でできているような感じだ。このバイクでGPに出場していた人たちが、どれだけヒーローだったかを思い知らされたよ」
2003年、シーンは癌で亡くなった。わたしは彼のレースを何十回となく見てきたし、最近ではグッドウッド・リヴァイヴァルでも見た。カーディフ・ドックのホテルのフロントで、彼の古いバイクに座っているだけでワクワクし、多くの思い出がよみがえってくる。