【詳細データテスト】日産キャシュカイ 力不足のエンジン 一貫性のないステアリング 実用性は高水準
公開 : 2021.08.07 20:25
走り ★★★★★★☆☆☆☆
万人受けを狙ったクルマとしてみると、この新型キャシュカイで唯一不満を覚えるのがパワートレインだ。今回のテストに持ち込んだのは158psの1.3LエンジンにMTを組み合わせた前輪駆動モデル。データ上では、すくなくとも150ps程度にとどまるライバルたちよりわずかに強力だということになる。しかし実際のところ、キャシュカイはそう感じられないのだ。
このエンジンは中回転域でもっとも能力を発揮するが、もう少し低回転域での力強さもほしい。2000rpmも回せばちゃんと走り出してくれるが、速く走らせるには、ファミリー向けのコンパクトSUVでそうしたいと思う以上にがんばらなくてはいけない。
マイルドハイブリッド付きのガソリンエンジンを積んでいることを考えれば、これにはちょっと驚かされる。スターターモーターが、低回転域では動力アシストをするはずなのだから。少なくとも12Vシステムは、ストップ/スタートシステムをスムースに作動させてくれるのだが。
日産が公称する0−100km/h加速タイムは9.5秒だが、われわれのテストでは、その差はそれほど大きくないものの、これに及ばなかった。1.3L直4ユニットはスムースで、ほとんどの間はすばらしく静かだ。とはいえ、音が大きくなると、ちょっとディーゼルを思わせるところがある。
そうした短所も、ギアボックスの操作を楽しんでいると忘れてしまいがちだ。ただし、クラッチペダルの感触はフワフワしたところがあり、ミートポイントが高めだ。それはまあ大目に見るとしても、そのクラッチを切った際の回転落ちがあまりにも遅いのはいただけない。そのせいで、変速をすばやくスムースに行うのが難しくなっている。
ギアチェンジの動きを、もう少し明確にしてほしいという不満もある。手応えは軽いがやや引っ掛かりがあり、しかもストロークが長い。
結果としてこのキャシュカイは、ATのほうが合っているクルマだろうという印象を抱かせる。それならば、パワーデリバリーのフラットスポットがごまかせるはずだ。しかし残念なことに、以前に試乗したCVT搭載車にも問題があった。結局、どちらを選んだとしても、満足できるパワートレインとはいいがたいのが現実だ。