【足りなかったのは?】東京五輪の大規模交通規制 メディアの“務め”とこれから

公開 : 2021.08.07 11:50  更新 : 2021.12.13 21:26

車線規制への疑問符 目立たぬステッカー

開催直前に多くの競技が無観客になったので、交通規制は必要ないという主張もある。しかし東京在住の人なら、都内のスポーツ観戦はほとんどの人が公共交通を使うことは知っているはず。

一連の交通規制は関係者の安全確実な移動のためで、もともと観客の有無は関係ない。

専用レーンを示すピンクのラインは、開会式前にかすれ始めていた。左右のブレーキランプの間にあるピンクの四角が、関係者用車両を識別するためのステッカー。「驚くほど小さく、瞬時には判断できない」と筆者。
専用レーンを示すピンクのラインは、開会式前にかすれ始めていた。左右のブレーキランプの間にあるピンクの四角が、関係者用車両を識別するためのステッカー。「驚くほど小さく、瞬時には判断できない」と筆者。    森口将之

このように多くの交通規制には納得している筆者だが、例外もいくつかある。

まずは常磐自動車道など首都高速につながる高速道路の一部で車線規制が行われ、連日大渋滞になっていたことだ。

東名高速道路など車線規制のない高速道路もあるが、そちらで混乱は起こっていない。

渋滞を作るための規制と思えてしまうし、首都高速と違ってエッセンシャルワーカーも影響を受けている。むしろこちらを報道すべきだと思うのだが、東京以外のニュースを伝えても注目度が薄いのか、ほとんど取り上げられていない。

一般道路の中途半端な対応も目についた。専用レーンや優先レーンを示すピンクのラインは開会式前なのに一部がかすれ、塗り直した場所もあった。

関係者用車両は既存の観光バスやタクシーを起用し、識別のステッカーを貼っていたが、ステッカーが驚くほど小さく、瞬時には判断できない。

無観客となったことで、国立競技場など一部の会場はフェンスで覆われている。

そのフェンスは白と深い赤の2トーンにゴールドで「TOKYO 2020」と描かれていて、メッセージが明確だ。このデザインを車両に大きくラッピングすれば、中途半端なピンクのペイントはなくても済んだだろう。

都市交通に関わるデザイナーが担当すれば、はるかにスマートに仕立てたと思うし、実際に好ましい実例を見てきている。交通規制もアーバンデザインのひとつ。これを今の東京のデザイン力と判断されるのは残念だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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