【GT-Rより新しいのに】ホンダNSXが短命に終わったワケ 旗艦モデル廃止 ホンダブランドの行方は?

公開 : 2021.08.11 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

ホンダNSXが生産終了。短命となったワケを解説します。フラッグシップが続々廃止され、ブランドイメージも危惧されます。

短命 早くも生産終了の発表

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

クルマが好きな人であれば、NSXは誰でもご存知だろう。ホンダが世界に誇るスーパースポーツカーだ。

初代モデルは1990年に発売され、エンジンをボディの中央に搭載する本格的なミドシップレイアウトが注目された。

ホンダNSX
ホンダNSX    ホンダ

オールアルミボディで、V型6気筒3Lエンジンを搭載しながら、車両重量は1350kg(5速MT)と軽い。さまざまな改良を加えながら、2005年まで生産された。

2代目のNSXは、10年以上の隔たりを経て、2016年に発売された。

初代と同様のミドシップスポーツカーだが、メカニズムは大幅に異なる。

V型6気筒3.5Lツインターボエンジンに、ハイブリッドシステムを組み合わせた。後輪に加えて、前輪にも左右別々にモーターが配置され、4WDを成立させている。

このNSXが生産を終える。タイプSの追加を最後に、海外仕様も含めて終了するという。

生産は2022年12月までおこなうが、販売店では「NSXは生産規模が小さいから、生産枠が早々に埋まる可能性が高い」と説明した。

最後を飾るNSXタイプSの生産規模は、全世界で350台の限定だ。内訳は海外が320台、国内は30台にとどまる。

それにしてもNSXの廃止には驚いた。

現行型の発売は前述の2016年だから、2007年登場のGT-R、2008年のフェアレディZに比べると基本設計が新しい。

しかもハイブリッド車だから、システム最高出力が581ps、システム最大トルクも65.9kg-mに達しながら、WLTCモード燃費も10.6km/Lと良好だ。

ちなみに新型BRZは、水平対向4気筒2.4Lエンジンを搭載して、最高出力は235ps、最大トルクは25.5kg-mになる。

この性能でWLTCモード燃費は11.7-12.0km/Lだ。NSXはBRZの2.5倍に相当する動力性能を発揮しながら、燃費数値は近い。

つまりスポーツカーなのに燃費効率が優れ、時代のニーズに応じて、GT-Rなどよりも長く生産されると思われていた。

それが真っ先に生産を終える理由は何か。

ホンダの環境対応にそぐわず

NSXが生産を終える理由は大きく分けて2つある。

まずは環境対応だ。

ホンダNSX
ホンダNSX

ホンダでは、2040年に発売するクルマは、電気自動車と燃料電池車にしぼるとしている。

ハイブリッドを含めて内燃機関は搭載しない方針だ。この流れに沿ってNSXは役割を終えたと判断され、生産も終了した。

それでも今後は新しいスポーツカーを模索していくという。

つまりNSXは終了するが、スポーツカー市場から撤退するわけではない。

かなり先の話だと思うが、電気自動車や燃料電池車のスポーツカーを開発する可能性がある。

NSXが生産を終える2つ目の理由は、現行型の生産台数が少なかったことだ。

2016年の発売時点では「北米のオハイオ工場では1年間に1500台を生産して、その内の100台を日本国内で販売する」と述べていた。

仮に2017年から2021年までの5年間にわたって生産すれば、世界生産台数は累計で7500台、日本では500台を販売していたことになる。

ところが実際は、世界生産台数は2021年7月までに2558台だ。この内の464台が日本国内で売られた。

国内販売台数は1年間に100台の目標に近いが、世界生産台数は計画台数の34%にとどまる。大幅に少なかった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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