【GT-Rより新しいのに】ホンダNSXが短命に終わったワケ 旗艦モデル廃止 ホンダブランドの行方は?

公開 : 2021.08.11 05:45  更新 : 2021.10.22 10:07

売れ行きは伸び悩んでいた

世界生産台数が計画台数の34%で、しかも短命で終わるとなれば、NSXのプロジェクトが赤字になってしまう可能性もある。

現行NSXの価格は2420万円だから、単純に世界生産台数の2558台を掛けると、売り上げ総額は619億円だ。

アキュラNSX
アキュラNSX

NSXは特殊な高性能スポーツカーだから、開発と生産設備の費用などで、619億円が消費される可能性もある。

そうなると製造コストは、丸まるメーカーの負担だ。

NSXは高性能スポーツカーとあって、製造原価が1台当たり少なくとも1000万円には達するから、2558台であれば256億円の持ち出しになる。

先代NSXも生産台数は少なかったが、約15年間にわたって生産されたから、世界の累計生産台数は約1万8000台になる。

対する現行型は2558台だから、収支で辛くなるのは当然だ。

NSXの売れ行きが2558台にとどまったのは、NSXの売れ行きが、国内、海外ともに伸び悩んだからだ。

価格がネック? ニーズと隔たり

販売低迷の理由として、まずは価格が挙げられる。

先代型の価格は、1990年の発売時点で800万3000円(5速MT/東京地区)、2003年のマイナーチェンジ後でも920万7000円(6速MT/東京地区)であった。

NSXの初代と現行モデル
NSXの初代と現行モデル

それが現行型の価格は2420万円だから、先代型の2.6~3倍に跳ね上がった。

つまり先代型は、動力性能、価格ともに中級水準のスポーツカーだった。

それが現行型は、外観、性能、価格まで、本格的なスーパースポーツカーになった。

そこにユーザーニーズと商品の乖離が生じている。

1990年に発売された初代NSXは、ミドルサイズで切れの良い走りを味わえた。

価格もちょうど良く、約15年間にわたって販売したから売れ行きを伸ばせた。

しかし現行型は、動力性能が高まる一方で価格も高騰しており、先代型の馴染みやすさが薄れた。

とはいえ海外のスーパースポーツカーに比べると、ブランド力が弱く、先を急ぎすぎた印象を受ける。

現行NSXは前述のとおり前輪をモーターで駆動する4WDを搭載して、走行安定性が優れている。加速性能も抜群で、停車状態から100km/hに達するまでの所要時間は3秒少々と速い。

その一方でハイブリッドだから、走行性能が高い割に燃料消費量を抑えられる。

クワイエットモードでは、エンジンを停止させたモーター駆動のみの走行も可能で、従来のスーパースポーツカーとは異なる機能も備わる。

このように現行NSXは、優れたスポーツカーだが、ユーザーニーズとの隔たりも多く売れ行きは伸び悩んだ。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事