【詳細データテスト】マセラティ・クアトロポルテ エンジンは秀逸 明確な剛性不足 運転環境も不備が
公開 : 2021.08.14 20:25 更新 : 2021.09.05 19:09
内装 ★★★★☆☆☆☆☆☆
このクルマは前席でも後席でも、ほとんど誰もが身体を伸ばして快適にすごせそうだ。背が高いと後席ヘッドルームが十分ではないかもしれないが、その点は多くのSクラス級サルーンとそれほど変わらない。
トランクルームは広大で、フルサイズの高級サルーンでは備わらないこともある後席の分割可倒機構も持つ。完全にフラットになって荷室を拡大できるわけではないが、長尺物を積むのに便利だ。
しかしながら、ステアリングホイールの前に座ると、このクルマに期待するスタイリッシュで絢爛豪華なマテリアルが迫ってくるような感覚を覚えることは決してない。
ある部分では、インテリアに贅沢さやリッチさが感じられる。なめらかで柔らかいレザーが広範囲に用いられ、ダッシュボードやセンタートンネルを飾るクリア仕上げのカーボントリムはじつに魅力的だ。
しかしそれ以外の部分では、13万ポンド(約1820万円)近いクルマのキャビンに予期するようなクオリティが欠如しているのが目立つ。センターコントロールやセンターパネルのスイッチや補助的操作デバイスは、プレーンでチープな印象。ステアリングホイール上のそれも同様だ。
クロームに輝くダッシュボード上部の送風口に手を伸ばすと、その作りが安っぽくて壊れやすそうに感じるだろう。テスト車では、運転席のフットウェルにもフィッティングがちゃんとしていないところが見られた。シートクッション周辺のプラスティックのモールディングも、粗くてややエッジの尖ったところがあった。
ハイエンドの高級イタリア車に望むような、スペシャル感のある見栄えや感触に欠けるこのクアトロポルテだが、そのほかにも明らかに品質面の問題を抱えている。
ドライビングポジションの歪みこそが、このクルマ最大の欠陥だ。センタートンネルがフロントのバルクヘッドに届くまで伸びているが、ステアリングコラムはその先のメカニズムに蹴られて、あるべき位置に据え付けられていない。
これはもちろん右ハンドル化の弊害なのだろうが、エルゴノミクス的なレイアウトがマセラティのプライオリティ的に低いのだろうと思わざるを得ない。ドライバーズシートに対して、ペダルは理想的な配置より50mmは右へオフセットしているのに、ステアリングホイールは逆に左へ25mmズレている。
ここまではっきりと肉体的な無理を強いられる新車に、2021年にもなって出遭うとは思いもしなかった。こんなことは滅多にないが、よりにもよってこれほど高額なクルマでそれを見つけてしまっては、大目に見るというわけにはいかない。