ボルボXC90プロトタイプ
公開 : 2014.04.03 22:40 更新 : 2017.05.29 19:08
ストックホルムまで2時間のフライトを終え、国内便で90分、そしてそれからクルマで80分ほど走ったところに” ボルボ・ノース” の実験場はある。スウェーデンの北極圏近くの場所であるが、それがどこにあるかは私は話すことができない。ボルボから堅く口を閉じるように指示されているからだ。
この実験場では、新しいXC90がウインター・テストを行っていたが、われわれが到着したのはその最終日だった。XC90は、発売まで12ヶ月を切っており、エンジニアは熱と湿気をさがして世界中を走り回っているところである。
スウェーデンのエンジニアには2台のテスト車両が割り当てられている。1台はターボチャージャーとスーパーチャージャーの両方を持つガソリンのVEAエンジン。そしてもう1台は、S60にも搭載されるディーゼルのVEAの高性能バージョンだ。共に、メカニカル4WDシステムを備えている。
XC90は、ボルボの新しいSPAアーキテクチャーをベースとする。このアーキテクチャーは4.55mから5.07mまで対応が可能で、将来的には40シリーズ、60シリーズ、そして90シリーズに使用されることになる。このプラットフォームは高張力鋼板および超高張力鋼板が使用されており、ボルボはこのクラスで最も軽いシャシーであるという。但し、フロント・ストラットのみはキャスト・アルミニウム製だ。このダブル・ウィッシュボーン・フロント・サスペンションは、スチール製のバルクヘッドとインナー・ウイングに鋲着されている。
新しいXC90は、現行モデルよりも100mm長く、わずかに広く、ホイールベースも長くなっているが、トレッドはより拡大されている。フラットなサイドと、印象的なノーズ・スタイリングを持つ。
キャビンは現行モデルよりも明らかに広い。背が高いドライバーがフロントに座っても、2列目の足元には充分なスペースがある。また、ボルボは長距離の旅行でもない限りは、サード・シートも大人が充分にすわることのできるスペースが確保されているとしている。
私は、ガソリン・モデルのXC90のプロトタイプを、R&Dの責任者、ピーター・マーテンスの横に乗って、氷上のテスト・コースへと足を踏み入れた。
その300psを発揮するエンジンは印象的なペースをもたらす。あっという間にマーテンスは200km/hにまでプロトタイプの速度を上げる。
まず関心するのが、新しいVEA 4気筒エンジンのサウンドだ。洗練された、やや電気的な感じのするサウンドを発生する。マーテンスは5気筒や6気筒のようなサウンド・チューニングを目指したという。また、マーテンスは、雑音を発揮するすべてのソースの見直しを図ったともコメントしている。
インテリアで注目すべきは9.5インチのタッチ・スクリーンだ。ライバルが数多いボタンを配しているのに対し、ボルボは6つのスイッチだけでまとめている。また、そのタッチ・スクリーンは、フロント・ガラスに反射しないよう高価なフィルタを採用したほか、手袋を付けたままでも動かすことが可能なのだ。
伝統的なボルボの弱点として、つまずくような乗り心地があることだったが、この新しいXC90ではそれがなくなっている。テスト・コースにあった圧縮された氷の端に乗り上げても、新しいシャシーは影響を受けなかった。これは新しいフロント・ダブル・ウィッシュボーンの影響だろう。また、新しいSPAベースのボルボは、ハンドリングも大幅に改善されている。
ディーゼル・モデルに関しては、8速オートマティックとのマッチングを確かめる程度であったが、クラスをリードするパンチを持った組み合わせであった。
シャシー・チューニングの80%は完了し、残りの65%はクルマとしてのフィニッシュを高めるために費やすと、ボルボのエンジニアリングの責任者がそう語っていたのも理解できる。あと1年、発売まで時間があるにもかかわらず、新しいXC90は既に洗練された領域にまで達しているのである。
(ヒルトン・ホロウェイ)