【コスワース・エンジン搭載】モーガン4/4 初代オーナーはレースドライバー 前編

公開 : 2021.09.04 07:05  更新 : 2021.09.06 15:27

40年以上も乗り継がれる、コスワース・エンジンを積んだモーガン。最近になって由緒ある歴史が判明した4/4を、英国編集部がご紹介します。

人生と切っても切れない関係のモーガン

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
撮影:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
逆らえない定めのように、想定外のトラブルに襲われても、特定のブランドから離れられないというクルマ好きは少なくない。今回ご登場願ったティム・ハーパーもそんな1人。英国マルバーンの街で作られ続ける、ロードスターへの情熱は冷めることがない。

モーガンは、彼の人生と切っても切れない関係にある。最初に恋に落ちたのは4/4(フォー・フォー)。妻になる女性との出会いは、プラス4と一緒だった。アッシュ材のフレームとともに、彼は世界各国を旅してきた。

モーガン4/4(1964年/英国仕様)
モーガン4/4(1964年/英国仕様)

そんな蜜月な関係をピークに高めたのが、コスワース・エンジンを搭載する4/4。これまで40年以上も一緒の人生を歩んできたというが、最近になってその歴史が明らかとなった。

「わたしの初めてのモーガンは、大学卒業と同時に買ったフラット・ラッドと呼ばれる4/4。個人売買の専門紙に載っていた、その中で1番排気量の大きいスポーツカーだったんです」。ハーパーが馴れ初めを振り返る。

「ヴァンガード社製のエンジンが載っていました。トラクターと同じエンジンでしたが、当時は知りませんでした。それから、1954年式のプラス4へ乗り換え。シチリア島からデンマークへ、ドライブもしています」

中東での石油採掘の仕事を終えると、ハーパーはデンマークへ移った。「デンマークは初めての場所でした。上司からは、国をクルマで横断するにはフェリーに乗る必要がある、と聞いていました。そこでも、選んだのはモーガンです」

キャベツ畑に転がり落ちた4/4

「滞在したホテルは禁酒を強いていて、2日目の夜からはクルマを運転して過ごしました。郊外を宛もなく。その途中にマギーと出会い、結婚して50年が過ぎます」

ハーパーは英国へ戻り研究者の道を選ぶが、難しい選択に迫られた。クラシックカーへの情熱は、その時すでに大きくなっていた。「クルマもマギーも、どちらも本当に大好き。モーガンを売るという決断は、かなり難しいものでしたね」

モーガン4/4(1964年/英国仕様)
モーガン4/4(1964年/英国仕様)

「北海での掘削にも少し関わりましたが、学生へ戻る決意をしたんです。学位の取得に専念するため、モーガンを売却。かわりにモーリス・マイナーを運転して、時間を満たしました」

モーガンの不在に耐えて博士号を取得したハーパーは、アバディーン大学で教職の仕事に就く。花崗岩の建築で有名な、スコットランドを代表する大学の1校だ。

論文を抱えてアバディーンへ向かう途中に見かけたのが、美しいホワイトに塗られた1950年代のプラス4。その姿へ心が奪われ、再びモーガンに乗りたいという衝動に駆られたという。

ハーパーが続ける。「市街地を運転していると、歪んだ状態のモーガンを発見したんです。所有者を訪ねると、キャベツ畑に転がり落ちたという話でした。ハードトップが付いていなければ、ぺちゃんこだったでしょうね」

「彼は1930年製のアルファ・ロメオ6C 1750のレストアを考えていて、モーガン4/4の売却には前向きでした。今では考えられないくらい安く、モーガンを手に入れたんです」。しかし、1つ条件があったという。

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