【コスワース・エンジン搭載】モーガン4/4 初代オーナーはレースドライバー 前編

公開 : 2021.09.04 07:05  更新 : 2021.09.06 15:27

トラウマになったエンジンブロー

過去のレース戦績を尊重し、ボディをシルバー・ブルーで、ハードトップをダークブルーで塗装するという内容だった。クラシックカーを売るために持ち出した古いネタ話だと思い、ハーパーは深く気に留めなかったらしい。

それでも、地元のガレージへレストアを依頼する時には指定のカラーを選んだ。トランスミッションが降ろされ、ボディはまっすぐに戻された。サスペンションは、アライメントが修正された。

モーガン4/4と現オーナーのティム・ハーパー
モーガン4/4と現オーナーのティム・ハーパー

シルバー・ブルーのモーガン4/4は、普段乗りのクルマとして活躍した。近所の買い物から、英国を縦断するような休暇の旅行まで。「仕事でも乗りました。夏はオープンで、冬はダークブルーのハードトップを付けて」

「エンジンは、シンプルなコルティナ1500GT用でした。パフォーマンスはほどほど。故障しても、個人売買で簡単に別のエンジンを入手できたものです」

マクラーレンで技術者をしていた友人がいて、いつもモーガンを手伝ってくれました。彼づてで、ディープ・サンダーソンというスポーツカーのレストアを手掛ける人と出会い、ローレンス・チューン仕様の1600ccブロックを載せた時もありました」

「トルクが太く、良く走りましたよ。高速道路では、140km/h以上まで加速できました。しかし、息子のロイとのフライフィッシングからの帰りに、エンジンブローです」

「1万1000kmを超えた頃でしたが、エンジンブロックの横から何かの破片が飛び出したことは忘れられません。トラウマになりました。近場のガレージへ牽引してもらい、4/4が家へ戻ってきたのは3週間後でした」

初代オーナーはレーサーのジョン・マッケニー

災難にあったハーパーだが、別のコルチナ用エンジンでモーガンは息を吹き返す。しかし、コロンビアからノルウェーへと一家は引っ越しを繰り返すことになり、モーガンは英国に残留。

ビンテージもののフェラーリベントレーを所有する、友人のガレージに保管された。「数年後に英国へ戻ると、再びモーガンで週末を楽しむようになりました。でも、戦争から帰還したスピットファイアのようにボロボロだといわれ、手を施そうと思ったんです」

モーガン4/4(1964年/英国仕様)
モーガン4/4(1964年/英国仕様)

モーガンは、息子のロイの提案で赤く塗られた。クルマの歴史に興味を抱いたハーパーは、4/4の歴史を調べ始めた。記録をさかのぼるが、最初のオーナーの名前と住所は走り書きされ殆ど判読できない状態だった。

英国南西部、チェルトナムのシーダー・モーターハウス社が販売した4/4だとわかり、売り手も調査には協力的だった。それでもスコットランド風の名前で、ぶどう園で働いていたという記憶以外、情報は得られなかったという。

「そこと思しきぶどう園へ電話をすると、30年前に確かにその人物は働いていたとのこと。でも、それ以上はわからずじまい。行き詰まり、調査は諦めました」

歴史解明は放置状態となるが、1997年にハーパーが自らのクリスマス・プレゼントとして買った本で進展する。モーガン・スポーツカーズ〜ローレンス・チューン・イヤーズ1961-1964という1冊だった。

ページを捲ると、レーサーのジョン・マッケニーが4/4のステアリングホイールを握る写真と出会う。本の解説が、初代オーナーの名前の判読へとつながった。

この続きは後編にて。

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